◎過去のコロキウム(第120回 - 第129回)
第120回
『揺れない大地震 〜スロースリップ』
辰巳 直人(赤磐市竜天天文台)
<概要>
近年の地震学において、地震・地殻観測網の発達により、まったく被害を出さず地震計に揺れも記録されないにもかかわらずマグニチュード6を越す、いわゆる大地震に匹敵する、「揺れない大地震」の存在が明らかになってきた。
地震学の基礎(マグニチュードの種類や定義等)から順次ご紹介する。
ユレダス・緊急地震速報・新幹線の脱線対策や「ぐらっときた」時の対応等、防災関連にも触れたい。
第122回
『誘発的星形成領域のミリ波サーベイ観測』
丹羽 隆裕(西はりま天文台)
<概要>
星は分子雲の収縮によって形成されるが、そのメカニズムは大きく2つに分けることができる。一つは分子雲の自己重力が主因となって星形成が進行する自発的星形成で、もう一つが誘発的星形成である。
誘発的星形成は自己重力の他、大質量星からの紫外線や恒星風、若い天体からの双極分子流などが分子雲を圧縮し、星形成を促進するメカニズムである。この結果、分子雲は大質量星から近い順に圧縮されるため、誘発的星形成領域では形成された星が、大質量星側から分子雲側に向かって、年齢順に並ぶことが知られている。
誘発的星形成は元々、大質量星の形成メカニズムであると考えられていたが、近年の研究で、太陽質量程度の星形成も行われていることが明らかになり、褐色矮星等の超低質量星の形成メカニズムとしても注目されている。また、星形成領域内に大質量星が存在すればその影響は周辺の分子雲に及ぶと考えられるため、誘発的星形成は星形成メカニズムを知る上で非常に重要な過程と言える。
しかし、誘発的星形成領域の研究は、自発的星形成に比べて遅れており、電波・近赤外線観測は共に、高感度、広視野、高空間分解能の観測が少なく、自発的星形成と比較した場合の分子雲の形状、質量分布、密度構造の違いや、形成される星の初期質量関数など、誘発的星形成のメカニズム自体にまだ多くの謎が残されている。
今回は、大質量星からの紫外線と恒星風による誘発的星形成領域に着目し、W5-East HII領域(距離2kpc)の周囲に付随する分子雲のミリ波によるサーベイ観測を、野辺山45m電波望遠鏡を用いて行った。観測では、W5-Eastに付随し、すでに誘発的星形成領域の候補天体として同定、カタログ化された Bright Rimmed Cloud(BRC)3天体を中心として、無バイアス、広視野での観測が可能な OTF マッピング法を用い、分子雲全体の観測を行うことで、紫外線の照射の程度(紫外線源となる大質量星と分子雲の距離、スペクトル型)による星形成メカニズムの違いを解明することを目的とした。
また、誘発的星形成の直接の証拠となる、すでに形成された星の空間分布や年齢等を、スピッツァー宇宙望遠鏡、IRAS、2MASSなどの赤外線アーカイブデータを用いて推定した。
その結果、W5-Eastでは、BRCを含む大質量星からの紫外線の照射を受けた分子雲は、照射を受けていない分子雲と比較して柱密度が最大で2倍大きくなることを発見し、分子雲圧縮の物理的な証拠を得た。また、W5-Eastを取り巻く分子雲は、BRCに限らず領域全体で誘発的星形成領域が起きていることも確認した。
今回は、これまで行ってきたミリ波による電波サーベイ観測の結果を踏まえ、講演者が博士論文で展開した議論を中心として、誘発的星形成のメカニズムについて紹介する。また、西はりま天文台赤外線カメラでの観測等、今後の展望についても講演を行う予定である。
第123回
『生まれ変わった姫路科学館の展示』
安田 岳志(姫路科学館)
<概要>
姫路科学館は、初めての展示リニューアルを行いました。4階の宇宙のコーナーの展示も従来のパネル中心から、触ったり実験できるものし、太陽望遠鏡も新しい試みを取り入れた物を製作しました。企画から実際の完成物までの軌跡をご紹介します。
『星形成領域の観測的研究:
オリオンA分子雲コアの野辺山CS(1-0) サーベイの再検証』
佐藤 友美(西はりま天文台)
<概要>
最近の研究から、分子雲コアと呼ばれる高密度のガス塊から星が誕生することが分かってきており、またこの分子雲コアの性質が星の質量決定に密接に関与しているのではないかということが期待されています。しかし、理論的、観測的双方のアプローチにおいて、まだ十分な裏付けはなされていません。
そこで、分子雲コアの質量関数と星の質量関数との関係を統計的にとらえることを目的として、太陽系から最も近い巨大分子雲で、様々な質量の分子雲を含んだ分子複合体であるオリオンAに対し、Tatematsu, et al.(1993, ApJ, 404, 643) が国立天文台野辺山観測所45m電波望遠鏡を用いて行った、CS(1-0) 高分解能サーベイのアーカイブデータを再解析しました。
Tatematsu et al.(1993) が、分子雲コアの同定を目視によって行ったのに対し、本研究では、Clumpfind (Williams, et al.; 1994, ApJ, 428, 693) というアルゴリズムを用いて機械的に行い、解析結果を質量関数に表して比較する方法で検証を行いました。
現在の星形成領域に対する観測や解析の方法など、本研究を踏まえて分かりやすく解説したいと思います。
第124回
『X線データの解析とその活用』
前野 将太(西はりま天文台)
<概要>
X線天文学は光学に比べ歴史が浅いものの、これまでにいくつもの観測衛星が打ち上げられ、高エネルギーの宇宙の姿を私たちに見せてくれています。観測データはアーカイブとして手軽に手に入れることができ、また、パソコン1台で解析を始めることもできます。
今回のコロキウムでは解析環境を整えるところから、日本が2005年に打ち上げた5番目のX線天文衛星「すざく」のデータ解析について紹介するとともに、天文の教育や普及にどのように活かせるか述べます。
第125回
『X線データの解析とその活用』
前野 将太(西はりま天文台)
<概要>
X線天文学は光学に比べ歴史が浅いものの、これまでにいくつもの観測衛星が打ち上げられ、高エネルギーの宇宙の姿を私たちに見せてくれています。観測データはアーカイブとして手軽に手に入れることができ、また、パソコン1台で解析を始めることもできます。
今回のコロキウムでは前回に引き続き、解析環境を整えるところから、日本が2005年に打ち上げた5番目のX線天文衛星「すざく」のデータ解析について紹介するとともに、天文の教育や普及にどのように活かせるか述べます。
第126回
『なゆた望遠鏡を用いた彗星の撮像観測とその科学的意義』
石黒 正晃(ソウル大学)
<概要>
彗星のスナップショットには、多くの物理情報が刻まれています。私たちの研究グループでは、彗星を撮像することによって、彗星の起源や進化について研究してきました。
本講演では、彗星ダストの軌道進化理論にもとづいて、画像から彗星ダストの放出履歴や放出速度を推定する方法ついて紹介させて頂きます。更に、なゆた望遠鏡を用いて実施してきた観測結果や、今後の観測計画、改善したい点について言及します。
第127回
『太陽観測衛星「ひので」の画像教育利用』
時政 典孝(西はりま天文台)
<概要>
太陽観測衛星「ひので」は2006年の打ち上げ後、観測を継続しています。データは2日後には公開され、0.2秒角という高分解能画像と安定した画像は、太陽活動の紹介に大変扱いやすいものです。
私たちは、PAONETひのでデータ活用WGとして、国立天文台の共同研究に継続採択され、いくつかの教材を制作してきました。その教材について、紹介します。
第129回
『50年目を迎えたSETI』
鳴沢 真也(西はりま天文台)
<概要>
今年は世界初のSETI、『オズマ計画』が行われて50周年となる。SETIの概要、実際に観測された候補信号などについて紹介する。
発表者は4月末にヒューストンで開催された Astrobiology Science Conference に SETI Institute の招待で出席し、昨年秋に実施した多地点・多波長全国同時SETI『さざんか計画』について発表を行ってきた。その研究会で得られた世界SETIの最新情報や近未来構想についても紹介したい。