●ニュース: 〜月を見上げて、海のきらめきを探す〜 地球の「海の偏光」を初検出。「海を持つ系外惑星」探しに偏光観測が役立つことを示す。(2021/09/23)

海を持つ惑星の想像図。海面の「きらめき」が強く偏光する。クレジット:やこ/高橋隼


兵庫県立大学・名古屋大学・埼玉大学・ソウル大学の研究者からなる研究チームは、西はりま天文台の2mなゆた望遠鏡を用いて月面地球照を観測し、地球の「海の偏光」を初めて検出しました。

太陽系外惑星が続々と発見され、地球外生命の発見にも期待が高まっています。生命活動には液体が必要であると考えられていますが、系外惑星に海があるかを調べるのは簡単ではありません。滑らかな液面でキラキラと輝く光は「強く偏光する」という特徴を持ちます。したがって、偏光観測は、海を持つ系外惑星を探す手法として期待されてきました。しかし、地球を「遠く離れた惑星」として観測し、海の偏光を明確に検出した例はありませんでした。そのため、偏光観測が海探しに本当に役立つのか分かりませんでした。

研究チームは、月の夜面に映る地球の光である地球照を利用して、模擬的に「遠く離れた惑星」として地球を観測しました。32晩の観測から、「観測者から見える面に占める海の割合が大きいほど、地球の偏光度が高い」という結果を得ました。つまり、海の存在が地球の偏光度を高くしていることが、実際の観測により確認できました。この観測結果は、「海を持つ系外惑星」探しに偏光観測が役立つことを示すものであり、将来、偏光を活用した海探索の実現が期待されます。

本研究成果は、2021年9月14日に、国際学術誌「Astronomy & Astrophysics」にオンライン掲載されました。また、本研究の概要を、2021年3月22-26日に広島およびオンラインで開催された国際会議「IAU(国際天文学連合)シンポジウム360: Astronomical Polarimetry 2020 – New Era of Multi-Wavelength Polarimetry」にて発表したところ、Best Presentation Award (最優秀発表賞)の一つに選ばれました。

論文情報:
J. Takahashi , Y. Itoh , T. Matsuo , Y. Oasa , Y. P. Bach, and M. Ishiguro (2021), Polarimetric signature of the oceans as detected by near-infrared Earthshine observations, Astronomy & Astrophysics, 653, A99 [DOI]

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