●ニュース: 太陽型星のスーパーフレアから噴出する巨大フィラメントを初検出〜昔の、そして今の惑星環境や文明に与える脅威〜(2021/12/10)

若い太陽型星「りゅう座EK星」の想像図。スーパーフレアの発生に伴い巨大なフィラメント噴出が起こるようす。(クレジット:国立天文台)


兵庫県立大学 西はりま天文台の「なゆた」望遠鏡など、複数の望遠鏡・衛星による連携観測で、若い太陽型星(太陽に似た星)で発生したスーパーフレアに伴って巨大フィラメントが噴出(質量噴出)している様子が初めて捉えられました。若い頃の太陽がどのようにして地球や火星の大気に影響を及ぼし、生命の生存環境が作られていったのか、今回の成果は惑星での生命誕生に関わる疑問を解く糸口となる可能性があります。

巨大な太陽フレア(表面で起こる爆発現象)は、しばしばフィラメント噴出を伴って地球環境に影響を与えることが知られています。若い頃の太陽や、若い太陽型星(太陽に似た恒星)では、超巨大な「スーパーフレア」が若い惑星環境に影響した可能性が推測されていますが、フィラメント噴出の有無は全く知られていませんでした。西はりま天文台の研究員7名も参加する、国立天文台行方宏介特別研究員らの研究グループは、兵庫県立大学西はりま天文台の「なゆた」望遠鏡や、京都大学の「せいめい」望遠鏡等を連携させ、若い太陽型星りゅう座EK星のモニタ観測を実施しました。その結果、太陽型星で初めてスーパーフレアの可視光分光観測に成功し、さらに超巨大なフィラメント噴出を伴っていることを発見しました。噴出した質量は太陽での史上最大級の質量噴出現象の10 倍以上で、約500km/s もの速度で噴出していることが判明しました。この結果は、若い太陽や太陽型星は現在の太陽系に比べ惑星環境に非常に大きく影響していた可能性を示唆し、今後惑星での生命の誕生・維持の理解にもつながりえます。また、もし今の太陽でスーパーフレアが発生した場合の地球環境への影響を予測する手がかりともなり、我々人類文明にとっては減災面での貢献になることも期待できます。

本研究成果は、2021年12月10日に、英国の科学雑誌『ネイチャー・アストロノミー』に掲載されました。

論文情報:
K. Namekata, H. Maehara, S. Honda et al. “Probable detection of an eruptive filament from a superflare on a solar-type star”, Nature Astronomy DOI

詳しくは
国立天文台のウェブページ
国立天文台ハワイ観測所岡山分室のウェブページ
または
京都大学のウェブページ
Nature RESEARCH HIGHLIGHT
Space Scoop(子ども向け解説記事)
などをご覧ください。


本観測は、国内各地の大学による連携観測網「光・赤外線天文学大学間連携事業(OISTER)」の枠組みで行われました。



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