●ニュース: 中性子星の合体現象見つかる 〜なゆた望遠鏡、日本の望遠鏡群と共に重力波源の解明に挑む〜(2017/10/16)

現在稼働中の重力波検出器、米国にある2台の「アドバンスト LIGO (ライゴ)」 およびヨーロッパにある「アドバンスト Virgo (ヴァーゴ)」の研究グループが 2017年8月17日12時41分 (国際標準時)、中性子星の合体によるとみられる重力波を、 世界で初めて検出しました。これを受けて、すばる (米国ハワイ)、IRSF (南アフリカ)、 MOA-II (ニュージーランド) などの日本の大学・研究機関が運用する光学・赤外線望遠鏡が 協力して追観測を行い、中性子星合体の証拠を得ました。この追観測には、兵庫県立大学 西はりま天文台の「なゆた望遠鏡」も近赤外線カメラ NIC を用いて参加しています。

 重力波とは、強い重力の作用によって空間が歪められ、その歪みが波として伝わっていく 現象です。約100年前にアインシュタインが存在を予測したもので、現実には2016年の観測で 初めて検出されました。この時の観測グループは、2017年のノーベル物理学賞を受賞しました。 中性子星とは、ブラックホールに次ぐ高密度な星です。そのため、2つの中性子星が すぐ近くにいると、その強い重力で引き合います。結果、両者はお互いの周りを回って、 やがて衝突・合体します。この過程で放出された重力波が今回検出されたと見られています。 今回の観測では、地球上の3箇所で信号を捉えることで、重力波を発した天体の位置が正確に 割り出されています。地球から約1億3千万光年の距離で 太陽の1.17倍から1.60倍の質量を持つ2つの中性子星がお互いの周りを回っていた、という 計算結果が示されています。また、ガンマ線も観測されたことから、これらの中性子星が合体したことが示唆されました。

 これを受けて日本では、全国の大学や天文台の研究者が参加する天体重力波の電磁波追跡 観測ネットワーク(J-GEM)によってこの重力波源の追観測を行いました。 可視光・赤外線での明るさの変化を調べることで、中性子星の合体の際に見られる 核融合反応が起きている証拠を得ました。中性子星は太陽の8倍から10倍という重い星が 死ぬときの最晩年の姿です。2つの中性子星が合体すると、大量の中性子によって重い元素 までが一気に合成される(rプロセス)と考えられており、これが宇宙に存在する白金、 ウランなどの重い元素の供給源となります。しかしこうした中性子星の合体現象は、これまでの 観測では捉えられていませんでした。今回検出された光は、このrプロセスで合成された放射性元素の崩壊によるものと 考えられています。日本の研究グループは、世界各地に設置した望遠鏡によって この重力波源を観測し、世界で初めて、核反応の観点から中性子星合体を示す 結果を得たのです。

 重力波のような短時間のうちに起こる現象を解明するには、各地の望遠鏡が協力して 迅速に観測を行うことが重要となります。なゆた望遠鏡もその機動性を活かして、 これからも未知の現象の解明に挑んでいきます。

この研究成果についての国立天文台の発表はこちら



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