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見出し:ごあいさつ

自然の美しさと怖さ

小松左京氏を囲んで
日本沈没で有名な小松左京さん
(中央、女性は奥様)は、今回の
東日本大震災に心を痛めながら
7月26日亡くなられた。右は昨年
急逝された森本名誉顧問。左下が
黒田。

 自然の美しさと怖さについて2年前の佐用の大水害の際に書き綴りました。本年3月11日、またまた自然が猛威をふるい、多くの尊い命が奪われ、家を失い、さらには原発の脅威にさらされています。
 私は仙台に住んでいた2年間、天文学を学ぶだけでなく、大自然を相手に歩き回ったことを思い出します。石巻から三陸海岸、そして北上山地にと足を延ばし、中生代の様々な化石、とりわけアンモナイトの化石と戯れていた時がありました。三陸の漁村の小さな食堂で食べた「ほっけ」のおいしさも忘れられません。そして何よりも風光明媚な地形、伊能忠敬は測量には苦労しただろうな等と考えながら景色に見入ったものでした。
 そんな私の知っている場所の多くが一瞬のうちに消えてしまったのです。また私の親友の住む福島は、原発事故の影響をもろに受けています。もう震災から何ヶ月も経つというのに、先が見えてきません。歯痒さばかりが募ります。
 原発事故で有名になった放射性元素セシウム134、セシウム137。これらは普通のセシウム133にそれぞれ中性子が1個と4個余分に結合しているものです。半減期が2年余り、30年余りということで、放射能の量が半分になるのにも時間がかかります。特にセシウム137の影響力が長く続くことがわかります。食料などによって摂取すると、体内被曝の危険性もあります。
 悪い事ずくめのセシウムのようですが、セシウム133は放射能は出さず、世界で最も正確な秒を定義する原子になっています。つまりセシウム原子時計は、セシウム133が放射する9192631770ヘルツの電波を使って1秒を決めているのです。この時計はおよそ3000万年に1秒程度の狂いしか出ないと言われています。こんな時計を使うと、月の潮汐力によって地球の自転が少しずつ遅くなっていることも見つけ出してしまいます。うるう秒などという調整が必要なのも原子時計の正確さ故と言えそうです。
 地球は海水の満ち干だけでなく、プレートの移動や地殻変動やマントルの対流など、まさに生きていると言っても過言ではない活発な活動を続けています。これらの活動が、時折とんでもない猛威をふるうことがあるのはやむを得ないのですが、それらの猛威に備えることができるのは、地球の性質を良く知ることに尽きるような気がします。宇宙や地球の研究の重要性を国民こぞって理解していただきたいと願っています。

2011年 8月10日
兵庫県立西はりま天文台公園
 園長  黒 田 武 彦



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