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Kutnerまえがき

この本について

今回はテキストに全面的に改訂を行って、天体や天文現象についてのわかりやすい導入となっています。いくつかの基本的な物理の原理をさまざまな状況に対して適用することで、天文について知りたい人たちは、日常見ることができる物理現象と天文の世界とがどのように関連しているか学ぶことができるでしょう。最も簡単なことから始めて、このテキストは天文現象がどのようにして、なぜ起こるのか、そして天文学者はどのようにして、星や銀河や太陽系についての情報を集め、解釈しているかについての、幅広い説明をしています。テキストでは、星の特質や星の形成と進化、中性子星やブラックホール、銀河の性質、そして宇宙の構造といったことを扱っている。過去、現在、そして未来の宇宙の姿を考え、最後のいくつかの章では、これまでに太陽系とその形成について研究するために展開されていた概念を使って、他の惑星系を探したり、地球外の生命を探したりする可能性について考えます。理解を助けるために、役に立つ数式、章のまとめ、実際的な例、そして章の終わりの課題があります。基本的な物理学と数学の知識を仮定していて、学部学生が初めて天文学を学ぶときに適した内容を選んであります。

著者のクトナー(Marc L. Kutner)は1972年にコロンビア大学で物理学の博士号を取得しています。また、ニューヨークのレンセラー工学研究所の物理・天文学科の教授、アリゾナ州ツーソンの国立電波天文台の客員研究員を経て、1998年以来、アメリカ・オースチンの適さす大学の天文学科の客員研究員を務めています。著者の主な研究分野は、電波望遠鏡を使った天の川銀河や他の銀河での星の形成の研究です。他に、宇宙論の研究も行っています。クトナー教授には3冊の著書があり、100以上の研究論文があります。

まえがき

天文の研究は20世紀の最後の10年にさまざまな形で成果が出ました。電磁波のスペクトルのすべての部分について、観測技術の革命的な進展がありました。この多くが地上の望遠鏡についてのものですが、宇宙での観測も一つの方法として確立され、第2・第3世代の宇宙望遠鏡での成果を見るようになってきています。これらの宇宙望遠鏡は、感度・鮮明度の点で天文学のあらゆる分野を変え、いくつかの新しい分野を生み出しました。これらの観測的な進展は、コンピュータの能力の大幅な向上によって補われ、大量の天文のデータの処理と結果の理論的なモデル化を可能にしました。

これらの進展の最も驚くべき点は、「いったい全体としてどう働いているのか」に対して、納得できる回答を与えてくれることです。私たちの天文学の地平が広がっていっても、いまだに多くの現象を私たちが知っている物理で説明することができます。研究レベルでの説明のためにある物理法則を複雑な形で適用することが必要な場合であっても、通常はその現象を入門的なレベルの物理で理解する方法があるのです。おそらく、少ない数の物理の法則を幅広い場面で使うことができることの実際の例と言えるでしょう。単なる物理の応用でなく、天文学の問題に対する結果が物理の最前線に跳ね返るといった例もいくつかありますが、これらもよく使われている物理のことばで説明することができます。

この本は、どのようなものがあるかという単なるリストのつもりはなく、天文学の簡単なところを越えた学習をという学生たちのために書かれました。ある現象がなぜ起こるのか、そして天体はどのようになっているのかを知りたい学生のためのものです。また、遠く離れた天体について、どのようにして情報を集め、それを解釈するのかといった疑問にも答えています。

主な読者としては、大学の(古典)物理と関連する数学を1年間学習した人たちを考えています。ですから読者は天文学コースに必要な古典的な物理については知っていることを仮定していますが、「近代的な」物理については仮定していません。この本はワイリーから1986年に出版された「天文学:物理的な視点から(Astronomy: A Physical Persipective)」の続編です。その本を書いたときに読んでくれ、この新しい版にすることを勧めてくれた人たちに感謝します。

また、レベルの高い本も見た目に魅力があるようにできるはずだといういう私と同意見であるケンブリッジ大学出版のサイモン・ミットン氏に感謝します。それから、この企画を信じてくれて、初期のいくつかのラフなまとめから完成するまで見ていてくれたジャクリーン・ガーゲット氏にも感謝します。すべての段階で彼女は常に私の電子メイルでの疑問に対し適切に答えてくれたおかげで、この本を書き続けることができました。

ステファン・ボーン教授(ハーバーフォード大学)、ジェイムズ・フーク教授(コーネル大学)、ジュディス・パイファー教授(ロチェスター大学)は完成前のものを実際に授業で使ってみるという労をとり、結果を送り返してくれました。また、3人の教授たちのところの学生さんたちも、変則的な形にも関わらず使ってくれてコメントをいただきました。感謝しています。

私の友人で同僚でもあるナディン・ディンショウは、初期の段階で全体を読んでくれました。彼女のコメントとサポートはたいへん助かりました。

全体や一部を読んでコメントなどをしてくれた人はたくさんいます。匿名の人もいましたが、以下の人たちは名前を知らせてくれました。イムケ・デペイター(カリフォルニア大学バークレイ校)、デブラ・エルメグリーン(ヴァッサー大学)、アンドレア・ゲーツ(UCLA)、スティーブン・ゴッツマン(フロリダ大学)、リチャード・グリフィス(カーネギーメロン大学)、デビッド・ヘルファンド(コロンビア大学)、リー・ムンディ(メリーランド大学)、ジェイムズ・ナポリターノ(レンセラー大学)、ハイジ・ニューバーグ(レンセラー大学)。

多くの天文学者や物理学者たちから、この本で実際に使ったデータや図を提供してもらっています。あまりにたくさんの人たちですので、ここには書き切れませんので、図の説明のところに書かせていただいています。最も新しいデータや、いちばん良い図を私が使っているかどうか気にかけてくれた人たちには特に感謝しています。ときには思うような図が手に入らずにイライラするようなこともありましたが、大多数の場合は提供をお願いした甲斐がありました。うまくやりたいことを表現できない著者の意を的確に察してくれた非凡な編集者のイレーヌ・ピッジーと、この企画が常に進行するように配慮してくれた制作統括のキャサリン・ガーランドにも感謝します。

この企画は私がツーソンのアメリカ国立電波天文学観測所に3年間滞在していたときに始まりました。その職につくよう計らってくれたポール・ファンデン・ブート(アメリカ国立電波天文学観測所所長)や、刺激的な雰囲気にしてくれたツーソンの人たちと、サンタ・カタリナ山の眺望に感謝します。この企画は、私がオースチンのテキサス大学に滞在していたときに完成しました。その職につくよう計らってくれ、常に相談に応じてくれたフランク・バッシュ(マクドナルド観測所所長)に感謝します。やはり刺激的な環境を与えてくれているここオースチンの同僚達にも感謝します。

個人的なレベルでは、天文学をはじめたのは、ニューヨークのハイデンプラネタリウムの講座を取ることを母が勧めてくれたことによります。常にさまざまな質問を浴びせてくれた二人の息子、エリックとジェフにも感謝します。

さまざまな面で最も重要なことは、私の最も良き同僚で最も良き友人でもあるキャサリン・ミードがいなければ、この本はこうして出来上がってはいなかっただろうということです。彼女おかげで、本を書くことだけではなく、マラソンから、自転車、サッカーの審判、さまざまなことに取り組むことができました。彼女の推進力と好奇心のおかげで、私たちの最も重要な発見(天の川銀河の外の方の分子雲)をすることができました。より直接的には、この本で使われている図をきれいにすることを助けてくれました。