!!星のサイズ (2005年7月号宇宙Now、おもしろ天文学の微修正バージョン) !はじめに 夜空を見上げるとたくさんの星を見ることができます。そういったたくさんの星の中で、明るい星は大きいように感じますが、実際には望遠鏡で眺めても大きさが見えているわけではありません。ただ、たくさんの光がやってくるので大きく感じるだけで、いくら倍率を上げても太陽の黒点のような表面の模様が見えてくるようなことはないのです。今回は、星のサイズについて、最新情報を交えながらお話してみましょう。 !月を利用して測る 星の見かけの大きさを測る方法はいくつかあります。以前から使われている方法には、たとえば月がその星の前を横切る時に、その星がどんなふうに消えるかを詳しく観測するという方法があります。ただし、この方法では、月が通る場所にある星でなければサイズを測ることができません。もっと他の方法はないのでしょうか? !光学干渉計で測る 電場望遠鏡では複数のアンテナからやってきた電波を干渉させることで、一つのアンテナだけではわからないほど細かい様子を知ることができます。光でも同じようなことが可能で、星のサイズの測定にも使われていますが、実際にはかなりむずかしい技術です。ヨーロッパ南天天文台のVLTでは、4台の口径8メートルの望遠鏡で光学干渉計を構成しようとしており、現在は小型の望遠鏡を使って、そのための基礎的な実験を行っています。 そのような実験の一つとして、エリダヌス座の一等星アケルナーのサイズが測られました。しかも、地球の自転を利用して、さまざまな向きのサイズを測ってみたところ、アケルナーがかなり細長い形をしていることがわかったのです。アケルナーは高速で自転している星田ということが以前から知られていましたが、あまりにも高速なので、赤道のところが膨らんでいるため、このような細長い形になっていると考えられています。 また、同じヨーロッパ南天天文台で、膨らんだり縮んだりして明るさが変わっている星の一つであるりゅうこつ座のl(エル)のサイズの変化の様子も測られています。この星は、宇宙の距離を測るときによく使われているセファイド変光星の一つです。多数のセファイド変光星について大きさが変化する様子を測ることで、宇宙の距離の精度が向上することが期待されています。 !直接写す 地上の望遠鏡では、地球の空気のせいで、どれぐらい細かいところまで見分けることができるかという性能(分解能)を完全には発揮することができていません。宇宙に飛び出した望遠鏡ならば、その望遠鏡の限界まで写すことができます。ハッブル宇宙望遠鏡の初期の成果の一つですが、冬の星座のオリオン座の赤い星・ベテルギウスの形を直接撮影し、サイズを測ることに成功しました。ベテルギウスと太陽を置き換えたとしたら、地球どころか木星まで飲み込まれてしまう大きさだということがわかっています。 !まとめ 星の大きさは、星についてのとても基本的な情報の一つです。一つの測定は地味ですが、何度も測ることで、星の形がわかったり、宇宙の距離の精度の向上につながったりするのです。 ---- [[石田俊人のトップページへ戻る|FrontPage]] [西はりまのトップページへ戻る |http://www.nhao.go.jp/]