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はじめに(脈動星の課題)

脈動星からは、連星とならんで通常の恒星からは得ることができないさまざまなデータを手に入れることができるので、恒星天文学の中で重要な研究対象となっている。

たとえば、比較的最近では、脈動星のモデル計算から得られる結果と観測結果の不一致を一つのきっかけとして、天体物理現象で現れるプラズマに関する基本的データの再検討が行われ、複数のグループから新しい不透明度および状態方程式のデータが公表されることとなった。(これらのうちの一つとして、OPALグループによる新しい不透明度に関する非専門家向けの解説としてRogers and Iglesias 1994がある。また状態方程式に関するレビューとして、Rogers 1994。一方、Opacity Projectによって、これまでに発表された論文などは、Opacity Project Team 1995にまとめられている。)

さらに、脈動現象そのものも物理現象として興味深い対象であり、最近では不規則な脈動を決定論的なカオスとして理解しようという方向での研究が行われている。カオスとフラクタルについての一般向けの解説としては、山口(1986)がある。この分野の進展は目覚ましいものがあるため、上記の本は近年の進展については物足りないが、基本的な概念がわかりやすく解説されているという点では、現在でも十分に役立つと思われる。また、恒星の変動現象における非線形姓に関する研究会集録として、Takeuti and Buchler (1993)(あるいはこちら)がある。

また、脈動星は古典的セファイド変光星の周期光度関係などから、信頼性の高い宇宙の距離の尺度となっていることでも知られている。一方、その後の観測技術の進歩により、振幅が小さい、あるいは特徴的な周期が短い変動まで観測が可能となってきている。このために、新しく認められた脈動星の種類も多くなってきており、対象とする天体はますます広がりを見せている。

このように興味深い対象であり、近年の研究の進展も目覚ましい脈動星であるが、残念ながらこの文章で取り上げた内容は、筆者の専門分野との関連で、どうしても動径脈動星、中でもケフェウス座δ星型変光星が中心となってしまった。これは、単に筆者の力不足によるものであり、測光観測を行う場合に、動径脈動星の方が非動径脈動星より興味深いことを示しいるわけではないことにご留意いただきたい。

なお、この文章の読者としては、高等学校理科系程度の知識、および連星などの観測経験があり、変光星分野で共通している知識はあるものと仮定した。変光星全般については、たとえばHoffmeister et al.(1985)が参考になるであろう。この文章を記述する際に、上記の本を参考にした部分も多い。また、星の進化に関する基本的な用語も、説明なく使用している。たとえば、斉尾(1992)は、数式を用いず、しかも物理的な説明の豊富な、この分野の良書と筆者は考えているので、必要な方はご参照いただきたい。そのほか、最初に脈動星に関するある程度まとまった書籍をここで挙げておく。いずれも、主に理論的な内容を扱った本であるが、動径脈動・非動径脈動の両方を扱った本としてCox(1980)、主に非動径脈動を扱った本としてUnno et al.(1989)がある。この他、この分野の(当時)最近の研究会の集録としてStobie and Whitelock(1995): Out of Printがあり、以下の文章でも多数の論文を引用している。

また、JAPOAの会合においては、講演という形式であったために、直感的に理解しやすいかと思われる説明を行ったが、ここでは文章で読まれることを考えて書いているため、必ずしも講演当日の内容と一致した内容になっているというわけではない。

以下、最初に「脈動」という現象そのものについて、まとめておく。次に、実際に観測されている脈動星の種類と特徴について、それぞれの脈動星のタイプごとに短くまとめる。そののち、測光観測によって捉えることが可能な、いくつかの興味深い現象を紹介し、最後にまとめを行う。

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