:第6回(6月1日):前回の復習。光学的に厚い星のようなものは内部に温度構造を持つようになる。 さらに、自分自身の重さを支えるために、圧力構造ができること。 わかりやすいように分けて考えたが、実際の恒星では、重力を支えるための圧力構造と、エネルギーを外へ運ぶための温度構造の両方がうまく合うような内部構造となっている。このようなことを精密に行えば、星の中心部のような直接観測することができない場所の物質の状態(温度、密度など)も理論的に推測することができる。 実は、精密な理論的な計算を行わなくても、太陽の中心部のみについてであれば、以下のようにある程度は推測することができる。地球に届いている太陽からの熱量(太陽定数)と太陽から地球までの距離から、太陽がすべての方向に同じだけの熱を出していると仮定して、太陽からの全熱流量を求めることができる。それだけの熱を作り出すことを、石炭などを燃やすような化学反応で行うと数千年程度しか続かない。だから、太陽の熱を作り出しているのは燃焼反応ではない。 水素がヘリウムに変わる核融合反応であれば、太陽全部が水素だとすれば約1000億年ほど続く。これならば、現在知られている地球の年齢などと矛盾しない。 いくつかの数値を与えられたものとすれば、上記の太陽の寿命は掛け算と割り算だけで求めることができ、そこから、太陽の中心部で核融合が起こっていることがわかる。そして、太陽の中心が核融合が起こるほどの高温であることもわかる。 あとは、恒星の距離が測定されて、太陽と恒星は同じ種類の天体であることが理解できれば、他の恒星の中心部でも、上記で導いた太陽の中心部と同じ程度の温度であることがわかる。 :第5回(5月25日):観望会で使った望遠鏡の説明。 輝線で光る天体の例について補足。 輝線で光るのは、物質によって決まった光が出て、それがそのまま届いた場合である。途中で何度も周囲の物質によって向きを変えられたり、エネルギーのやりとりをする場合には、元々出た光の性質は失われてしまって、エネルギーのやりとりを何度も行った周囲の物質の方の性質が反映される。このような状況は「光学的に厚 い」。黒体輻射と呼ばれる光が出てくる。 黒体輻射の特徴:温度のみで決まる。同じ面積が光っている場合には、 +温度が上がるほど、出てくる光の量が増える。 +温度が上がるほど、最も明るく光る色(波長)が青く(短く)なる。 +温度が上がるほど、青い光の量が増える。全体の色が青くなる。 このことから、恒星からの光を使って、 +どの色の光がどれぐらい多いかという光の量の分布を求めて、それに最も良く合う黒体輻射の温度を求めることで、星の表面の温度を求めることができる。 +光の量が足りなくて、細かく色に分けることができないようなときでも、大まかに分けて色を測定すれば、そのような色になるのはどのような温度かがわかる。 現実の恒星は、地球からみて表面として見えているところ(光球)より外側にも物質がある。このために、外側の物質によって吸収線ができる。この吸収線がどのようなものが強いかは、星の表面の温度によって変わっていく。温度が高い星ではヘリウムの吸収線が出る。温度が下がってくるにつれて、水素の吸収線が強くなっていき、さらにカルシウムの吸収線が強くなっていく。さらに温度が下がると、分子による吸収帯が出てくるようになる。このように温度によって強く見える吸収線が変わっていくため、逆に恒星からの光を分光してその星の虹(スペクトル)を作って、どの吸収線が強いかを調べることによって、温度を推定することができる。 :5月18日:県立大学の開学記念日のためお休み。 :第4回(5月11日):夕方予定されている観望会で眺めることになりそうな天体の説明。月・土星・明るい恒星。 前回、物質によってそれぞれ決まった波長の輝線が出ることを話したので、その天体での実例の紹介。 天体の実例では炎色反応などの室内での実験で見ることができる色(波長)の輝線以外に、輝線があること。これらは「禁制線」と呼ばれていること。禁制線は非常に密度が低いところで出ていることを説明。 物質(元素)によって決まった波長で出ている輝線が観測されるのは、その光が基本的にはそのまま届いているからであること。逆に、そのままでは届かないというのはどういう状況か。定規で測ったような厚み(幾何学的厚み)とは別に、光にとっての厚み(光学的厚み)という概念の導入。 夕方観望会。月・土星・木星。時間的な制限とけっこう低いところまで見えてきて、木星がパッと見えたので、恒星はやめて木星にした。 :第3回(4月27日):今年度は講義の番外編のようなものとして観望会を計画した。その日程について相談。関連して、望遠鏡について簡単な説明。 第2回の補足として、一つの天体でも異なる波長の電磁波で見ると、異なる様子を見ることができることを、実際の例で示す。X線と可視、赤外線、電波など。 ボーアの原子模型から、元素により決まった波長で吸収線あるいは輝線を作ること。電離などすると、中性のときとは異なる吸収線/輝線を作ること。 :第2回(4月20日):宇宙からやってくる情報には、これまでに何らかの形で存在が確認されているものとしては、光(電磁波)、ニュートリノ、宇宙線、重力波の4種類がある。 ニュートリノは天文学と結びついているが、現在のところ限られた天体からのものしか受けることができていない。宇宙線は宇宙空間の磁場によって進行方向を変えられるため、生成した天体と結びつけることはむずかしい。重力波を出している天体は観測的に見つけられているが、まだ重力はそのものを観測することはできていない。こういったことから、現時点では天体についての情報の多くは電磁波によって得られている。ただし、電磁波にもさまざま(ガンマ線、X線、紫外線、可視光、赤外線、電波)あり、さまざまな宇宙の姿を見ることができる。 :第1回(4月13日):履修上の注意、書籍紹介、内容の予定、電子メイルでの最新情報の入手について、など。 導入として、宇宙という者のイメージを得てもらうため、パワーオブテン(Powers of Ten)を使いながら、宇宙の大きさと各階層での代表的な天体について紹介。