銀河の腕の秘密

銀河と聞くと渦巻銀河を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?
なぜ渦を巻いているのでしょう?

 なゆた望遠鏡と可視光撮像装置でとらえた子持ち銀河として有名なりょうけん座にあるM51です。綺麗な腕が印象的ですので、天文愛好家に人気のある銀河です。よく見ると腕の中央には黒い筋(ダークレーン)が見られます。ここには濃い分子雲(暗黒星雲)が多く存在しており、星の光をさえぎるために暗く見えています。天の川銀河にもこのような暗黒星雲は存在します。「銀河鉄道の夜」(宮沢賢治)の最後の舞台になった石炭袋(コールサック)も暗黒星雲のひとつです。
 さらに注意深く見ると、腕のなかでもダークレーンより内側は赤っぽくて、外側には青いぽつぽつとした部分が見られることに気づくと思います。この青いぽつぽつはオリオン大星雲のような星形成領域で、誕生したばかりの質量の重い青白い星が存在する領域です。内側の赤っぽい色は質量の小さい、寿命の長い星が多いことを示しています。これらの低質量星はダークレーンや外側の青っぽい領域にも存在しますが、ダークレーンでは光が遮られて、そして青っぽい領域では大質量星の光に隠されて、目立たないだけなのです。
 腕が明るく見えるのは星が集まっているからです。しかし腕を形作っている星たちはずっと腕にいるわけではありません。腕はよく交通渋滞に例えられます。星は基本的に銀河中心の周りを回転運動しています。そして星の渋滞が起こっている部分が腕として明るく見えているのです。渋滞に巻き込まれている星はやがて渋滞から出て行きます。しかし後方からは新たな星が渋滞に加わります。
 分子雲も星と同様に腕の部分で渋滞に巻き込まれます。そして分子雲どうしで衝突したりします。衝突した分子雲は圧縮されて濃くなり、新しい星を作る場合もあります。こうして生まれた新しい星は渋滞から抜けでたころに明るく輝きだします。
 青白い星は寿命が短いので銀河を一周することができません。それどころか、ほんの少し回っただけで死んでしまいます。ですので、青白い星は渋滞を抜けたあと、次の渋滞にたどり着くことなく死んでしまうのです。
 ダークレーンの片側だけに青白い星があるのはこのためです。