ヘラスが見えない:確認私見根拠
6月21日
 伊藤氏が撮影された画像に注目すべきものが出ています。撮影時刻が13:29(UT)のものを確認してください。ここには2本の雲帯が出ています。
 1本はシルチスのすぐ東側でリビヤとヘラスをつなぐように写っています。
 もう1本はキンメリウムの北端と、ヘスペリアの北部と、チュレニーの中央部にわたって見られます。ただし、この写り方はかなり淡く、はっきりしたものではありません。
 いずれにせよこの雲帯は5月20日前後の観測の時には存在しませんでした。
このことから・・・
 雲の発生が暗色模様の上、すなわち、1ヶ月前からダストに広く覆われていた地域の中心付近で帯状になって現れてきたことになります。

6月23日
 この日も伊藤氏の画像が決め手となりました。
 この日は、21日の画像と比べて大きな変化は見られないものの注意深く観察すると、まず、1本目のヘラスからリビヤにかけての雲帯は南進し、ヘラスに入り込んだことがわかります。そして、ヘラスの北端は明るい輝きを示し、明るい発達した雲に成長した様子が読み取れます。
 一方、チュレニー付近の雲はキンメリウムの北端から離れて、これも南進し、チュレニーの中央部をわずかに見えにくくしています。
 ここで、注目しておかねばならないのは、ブルーの画像でやや明るく写っていることです。このことは、単なるダスト(砂)ではなく水蒸気の雲を伴っているということです。
このことから・・・
 水蒸気の雲、すなわち低気性か前線性の雲が発生したことになります。安達の個人的な意見としては前線性だと思っています(線状の雲帯だからです)。この前線性の雲の嵐に乗って、著しく黄雲が 大きく育ち、広がっていったと、考えています。
 ダストが上空を覆うと、気温が下り、大気が不安定になるためにこのような気象現象が起こったというのが安達の考えです。

6月24日
 この日はたくさんの観測者の画像が得られました。この日は2つの注目点があります。
 まず最初に、アウソニアの北部に明るい斑点が出現していることです。これは、6月21日と23日に出ていたチュレニーの付近を通る、雲帯の中央付近にできた明るい部分で、この部分に著しい雲が出現したことを示しています。この影響を受け、チュレニーは著しく淡くなり、たくさんの観測者が黄雲の発生と確認しました。
 次に、ヘラスの北部の明るい雲ですが、これは23日の画像でもしっかりとらえられています。しかしながら、この日は雲はいちだんと発達し、雲の塊も複数になっている様子がとらえられました
このことから・・・
 23日に発生した明るい雲の塊が次第に急成長していく様子がとらえられ、ています。この一連の流れを考えると、この雲は南進し、あるていど南になったところから、いつもの黄雲のように西へと移 動して行くものと考えられます。
FROM 安達誠


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