火星共同観測ハンドブック
The observational handbook of Mars
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3.1999年の火星 赤羽徳英(京都大学飛騨天文台)

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(1)1999年の火星暦

火星の視直径が 8"以上となる期間は2月2日〜8月28日であり、10"以上の期間は2月26日〜7月20日である。撮像による場合,視直径が 10"以上あると、模様が写りやすく楽しく観測できる。2月から8月の間は、火星では北半球の初夏から初秋である。その間地球から見た火星のdisk center は北半球にあるので、火星北半球の様子がよく観測できる。

火星暦(For 0h Dynamical Time; Astronomical Almanacより)

Dated LsDe
Feb. 03 8.09 92.04 18.36
Mar. 03 10.54 104.55 15.68
Apr. 04 14.33 119.24 16.02
May 02 16.19 132.55 19.84
Jun. 03 14.12 148.45 23.08
Jul. 01 11.47 163.07 22.69
Aug. 02 9.26 180.65 18.87
Sep. 03 7.81 199.20 11.80

Ls:火星から見た太陽黄経(Ls=90゚は火星北半球の夏至,180゚=秋,270゚=冬至,0゚=春)
De:火星disk center(subearth point)の緯度
d:視直径(赤道方向)

観測日時における火星の暦はhttp://www.nhao.jp/~tokimasa/mars/ephem.htmlにて参照できます。


(2)1999年に観測可能な現象の概観

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A.朝雲と夕雲

火星北半球の春から夏にかけては,北極地方から南半球低緯度帯にかけての大気中の水蒸気量が多くなり、雲の活動が活発となる。低緯度帯ではどこにでも朝雲や夕雲が発生する。それらは仲春には既に観測にかかるほどに発達しているが、その最盛期は晩春から盛夏である。この時期には朝雲は日中になっても消滅しない。そして14h-15hMLT(火星地方時)ころから夕雲へと移行していく。それ故低緯度帯は雲の帯で取り巻かれているように見える(図1)。オリンパス山とタルシス3山に囲まれた盆地に発生する朝雲は興味深い。その高度は周囲の山より低いので,山の峰は雲の上にでている。


(右)Mar.05 13:39 CM=279 Ls=87
(中)Apr.01 13:45 CM=46 Ls=98
(左)Mar.24 16:30 CM=156 Ls=95 飛騨天文台撮影

B.昼雲

昼雲は早春から見られるが、最盛期はやはり晩春から盛夏にかけてである。昼雲は高い山に発生する傾向にある。エリシウム山、オリンパス山、タルシスの3山に発生する雲は明るく観測しやすい。朝雲や夕雲と比較して、昼雲は小さな明るい斑点に見える。最盛期には10hMLT頃から観測にかかる。朝雲が薄くなる頃である。昼雲の明るさは夕方に向けて増加する。しかし、夕方には夕雲が明るくなり、昼雲はその中に埋もれてしまう。雲の光学的厚さから推定すると、昼雲は13h-15hMLTに最も厚くなるようである。
フィルターをかけずに火星を見ると、雲は明るく見える。極冠のようにキラキラと輝く明るさではなく、鈍い明るさである.純白ではなく、やや灰色のような、あるいは青みを帯びているような感じである。撮像では青フィルターを用いると、雲は明るく写る。一方赤色光では地面の模様はよく写るが、雲はよほど明るくない限り識別できない。雲の観測には、青と赤のフィルターを用いることが望ましい。

C.ブルー・クリアリング(blue clearing)
青と赤のフィルターを用いると、ブルー・クリアリングの現象も観測できる。通常、青色光では地面の模様のコントラストが極端に低いために、地面の模様を識別できないのであるが、時にはそれを識別できることがある。その現象をブルー・クリアリングと呼んでいる.大シルチスは低緯度地方に在り、しかも南側以外は明るい地域で囲まれているので、ブルー・クリアリングの観測には最適である。今回は衝の直後に日本で大シルチス地方を観測できる。

D.模様の永年変化
暗い模様が見えなくなったり、明るい地域の一部が暗くなる現象が時には起こる。1973年、明るい地域のダエダリア(Daedalia: 30S, 120W)が突然暗い帯と化した。それが元の明るさに戻るまでに数年かかった。また,大シルチスから東の方へ円弧を描く暗い模様(Syrtis Major - Moeris - Nepenthes - Casius)は現在見えなくなっている。模様の変化は砂嵐と関係しているように思えるが、定かではない。


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