4.火星共同観測 赤羽徳英(京都大学飛騨天文台),時政典孝(西はりま天文台)

(3)観測方法

CONTENTSへ戻る

以下に地上から考え得る観測方法を示すが、行う観測は各施設・個人で可能な範囲の観測で構わない。

A.イメージ観測

CCD観測
モノクロ写真観測
カラー写真観測
ビデオ観測
スケッチ観測
できればCCDかモノクロ写真による観測が望ましい。雲や地形の観測では、赤,緑,青のフィルター(少なくとも赤と青)を用いないと、現象の判別がつけ難いためである。赤は火星表面の明暗模様やダストストーム、極冠の観測に、青は雲の観測に適している。探査機には、650nm(赤),550nm(緑),450nm(青)に中心を持つフィルターを使用するので、これに近いフィルターを使うのが望ましい。もしこれに近いフィルターがなくても、特性の分かっているものであれば使用できる。これから用意するなら、透過幅の広いフィルターでは中心波長400nm(青)、550nm(緑)、650nm(赤)が望ましいし、透過幅の狭いフィルター(半値幅約10nm以下)では420nm(青)、550nm(緑)、650nm(赤)(さらに可能ならば750nmと850nm)が望ましい。
可能であれば、これら3色のフィルターによる像を、なるべく10分以内で撮像しこれを一組とする。一組の観測が終われば、次回の観測は約1時間後で構わない。3色による観測の出来ない場合は、赤フィルターをかけた撮像を優先する。フィルター使用の優先順位は、赤−青−緑である。
なお、写真観測では所定の処理、CCD観測ではdark,flat fieldの処理を施すこと。時間の記録はなるべく正確(誤差1分以内)に記録することが必要となる。
カラー写真は黄雲の観測には最適であるし、ビデオ観測は雲などの時間的変化を追うのに適しているので、CCDやモノクロ写真でなくとも観測は行える。また、スケッチ観測では、シーイングの良い時を選んで現象を捉えることができるので、観測に慣れてくると、写真では判定困難なような細かい模様や色合いを識別できるので有効である。
なお、いずれの観測も、火星上の模様の位置測定のために、火星または近くの星のtrail(望遠鏡の駆動を止めてカメラの視野を星が通り過ぎる軌跡)を撮影して、カメラの傾きを求めておく必要がある。

B.光電観測

イメージ観測で示したようなフィルターを用いて観測を行う。
前述(観測テーマ)した火星の局所的な地点の観測については、diaphragm を小さくするか或いは像を大きくする必要がある。そのいづれも不可能な場合は、個々の地点の測定ではなく、火星全体のbrightness の変化を観測するのも面白いと考える。
以下にphotometryに関する論文を挙げる。

Mars: interpretation of spectra reflectivity of light and dark regions
J. B. Adams and T. B. McCord. J. Geophys. Res. 74, 4851,1969

Mars: narrow-band photometry, from 0.3 to 2.5 microns, of surface regions during the 1969 apparition
T. B. McCord and J. A. Westphal. ApJ. 168, 141, 1971

Observational evidence of crystalline iron oxides on Mars
J. F. Bell, T. B. McCord, and P. D. Owensby. J. Geophys. Res. 95, 14447, 1990

High resolution reflectance spectra of Mars in the 2.3 micron region: Evidence for the mineral scapolite
R. N. Clark and G. A. Swayze. JGR. 95, 14463, 1990

C.スペクトル観測

低分散で相対的反射能の差を観測する。冬の終わりなどに極冠が雲に覆われた時、雲と極冠の区別をつけられる。(詳細はお問い合わせください。)

D.偏光観測

ダストストームの発生を確認できる。しかし、偏光度1/1000の精度を求められるので、観測は難しい。(詳細はお問い合わせください。)


(4)共同観測参加者リスト
(1999年3月1日現在,あいうえお順:敬称略。メーリングリストへの参加者を含む。)

CONTENTSへ戻る

赤羽徳英
秋澤宏樹(姫路科学館)
安達誠(月惑星研究会)
池村俊彦(月惑星研究会)
荒木宏司
綾仁一哉(美星天文台)
綾部市天文館
稲田愛(Max Planck Institut fuer Aeronomie)
大倉信雄
小高正嗣(北海道大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)
小関高明(姫路市宿泊型児童館星の子館)
上玉利剛(かわべ天文公園)
河北秀世(ぐんま天文台)
坂井義人(小川天文台)
坂元誠(西はりま天文台)
成蹊高校天文気象部
出村裕英(会津大学コンピュータ理工学部)
田中英明(みさと天文台)
田中充孝
東工大附属工高科学部
時政典孝(西はりま天文台)
戸田博之
富田晃彦(和歌山大学教育学部)
中串孝志(京都大学大学院人間環境学研究科)
仲谷善一(飛騨天文台)
鳴海泰典(九州東海大学)
新川勝仁(月惑星研究会)
布村克志(富山市天文台)
野田寛大(国立天文台地球回転研究系)
浜根寿彦(ぐんま天文台)
福井実信
福島英雄(国立天文台)
船越浩海(西美濃天文台)
堀寿夫(那賀川町科学センター)
松本直記(慶應高校)
向井正(神戸大学理学部)
Rudy G. Rijmer
柚木健吉(月惑星研究会)
吉田浩之
渡部潤一(国立天文台)


観測所リスト

観測者名:阿久津 弘明
観測地:北海道旭川市
望遠鏡:280mm Newton F=4.3
観測装置:ToUcam Pro
観測所:安達観測所(安達誠)
望遠鏡:31cm反射(f=1995mm)
観測装置:スケッチ
フィルター:なし

観測者:池村俊彦
観測地:愛知県名古屋市天白区
望遠鏡:31cm Newton, F=5 + Teleview Ballow *5
観測装置:デジタルカメラ(NEC Picona)
高度に応じて検眼用プリズムを使用
デジタルカメラはレンズを取り除いてある
RAWファイルを得てからの画像処理ソフトは全自作

観測者名:永長英夫(Hideo Einaga)
       ALPO Japan(月惑関西支部所属)
  観測地:兵庫県加西市
望遠鏡:25cm反射
観測装置:ToUcam Pro、TGV-M(モノクロビデオ)
     ケンコー R60、G533、B390
     フジ    IR86  

観測者名:大河巨和(おおかわ ひろかず)せとうち天文同好会所属
観測地:高梁市(岡山)
望遠鏡:30cmニュートン反射(F5.3)、赤道儀タカハシJP
観測装置:カメラはデジタルビデオカメラ(ソニーVX2000)
観測者名:菅野 清一(Kanno Seiichi)
     月惑星研究会関西支部、東北惑星研究会所属
観測地:山形県上山市
望遠鏡:吉川光器 25cm Newton, F=6
観測装置:ビデオ(ToUcam Pro)

観測所:小川天文台(坂井義人,Rudy G. Rijmer)
望遠鏡:60cm反射(f=7.5m*3)ただしテスト未了
観測装置:CCDカメラ(浜松ホトニクス)、眼視
フィルター:バンドパスフィルター(R:630nm,G:520nm,B:450nm)

観測所:ぐんま天文台(浜根寿彦,Hakim Malasan)
望遠鏡:1) 30cmカセグレン
2) 25cmBRC または 30cmニュートン
観測装置:1) 光電測光器 (Optec社 SSP-7)
または 冷却CCDカメラ(ビットランBT-21-G2)
2) 冷却CCDカメラ(ビットランBT-21-G2 または ビットランBT-11)
フィルター:B, V, R (Bessell) (光電測光,CCD撮像それぞれについて)
備考:・望遠鏡と観測装置の 1), 2) はそれぞれ対応関係を表しており、
同時観測を考えています。
・光電測光は測光器を使用せずCCDカメラで実施する可能性もあります。
・望遠鏡設置(3月)後の、機材調整期間中の観測が大部分になります。

観測者名:鈴木 隆
観測地:東京都八王子市上野町
望遠鏡:18cmマクストフ(f 1800mm)
観測装置:ToUcam Pro

観測所:成蹊中学高校天文台(成蹊高校天文気象部)
望遠鏡:高橋FS-152 15cm屈折(f=8)、セレストロン C5 12cm反射
観測装置:冷却CCDカメラ(SBIG ST-9E、SBIG ST-5)、ビクセン低照度カラーCCDカメラ
フィルター:ケンコー工業用バンドパスフィルター
BP42(420nm),BP75(750nm),BP95(950nm)
SBIC ジョンソン・カズンズ準拠 B,V,Rc,Icフィルター

観測所:妹尾観測所(岡山)(戸田博之,大倉信雄)参考画像
望遠鏡:45cm, F=4.5 + Or.7mm,Or2.8mm
観測装置:デジタルカメラ(NIKON COOLPIX950)

観測者名:瀧本郁夫
観測地:Kokbunji-town Ayauta-gun Kagawa-prefecture,Japan
望遠鏡:310mm Newtonian F=6.5
観測装置:Olympus C-2040 ZOOM,MUTOH CV-04,Philips ToUcam Pro

観測所:ちはや星と自然のミュージアム(伏井信之)
望遠鏡:40cmSCT ドイツ式赤道義
観測装置:ToUcam Webカメラ
SBIG CFW-8 R(585−680nm) G(496-585nm) B(380-502nm)

観測者名:東京工業大学工学部附属工業高等学校科学部
観測地:東京都港区芝浦
望遠鏡:MEADE/LX200GPS-20
観測装置:philips/ToUcamPro

観測所:とほり天文台(井上毅)
望遠鏡:20cmF5ニュートン反射望遠鏡+タカハシOr7mm
観測装置:ToUCamPro

観測所:那賀川町科学センター(堀寿夫)
望遠鏡:113cmカセグレン、25cm屈折
観測装置:冷却CCDカメラ(mutoh CV-16U)+干渉フィルター
  トーカイ製LRGBフィルタータイプ3 および IDAS R、V、Bフィルター
ビデオカメラ ビクター製3CCDビデオカメラ KY-D200CH

観測者:仲谷善一
観測地:神岡町内及び飛騨プラネタリウム
所属:ひだ神岡星友会(ひだかみおかせいゆうかい)
Astronomical Society of hida Kamioka
観測器材:30cm反射、10cm屈折など
カラーフィルム(FUJI G800),CCDデジタルビデオカメラ

観測所:名寄市立木原天文台
望遠鏡:25cm反射・20cmバイザック
観測装置:冷却CCD+VTR
フィルター:U.B.V.R.IR

観測者:新川 勝仁(Niikawa Masahito)
所属:月惑星研究会関西支部
観測器材:28cmシュミットカセグレンC11
http://niikawa.hoops.ne.jp/にて紹介しています)
観測地:大阪府堺市
観測器材:デジタルカメラDimage Ex 1500
(撮影レンズを抜きモノクロCCD - Sony ICX205AL - に換装)
フィルタ:以下のフィルタを適宜選択して使用
UV:IDAS−U(350nm - 390nm)
B :ケンコーB390(360nm - 500nm)
R :ケンコーR64(640nm - 1000nm)
IR:富士アセテートIR84(840nm - 1000nm)

観測所名:甲賀天文台西谷観測所(西谷輝昭)ALPO Japan
観測地:滋賀県甲賀町(北緯 34°53′54″ 東経 136°13′02″)
望遠鏡:21cm Newton(ASKO) F:6 + Televue POWERMATE *5
観測装置:デジタルカメラ(NEC Picona 改)池村方式

観測所:西はりま天文台(時政典孝,坂元誠)
望遠鏡:60cmカセグレン
観測装置:CCDカメラ(HPC-1,ST6)、VTR、カラー写真(FUJI SUPERG400)
フィルター: バンドパスフィルター;I(830nm),R(665nm),V(547nm),B(427nm)

観測者名:畑中明利(Akitoshi Hatanaka)
観測地:三重県熊野市
望遠鏡:40cm カセグレン(F15)
観測装置:ToUcam Pro 

観測者名:林 敏夫
観測所名:林天文台(HAVIOS)

観測地:京都市右京区
望遠鏡:セレストロン C14 シュミットカセグレン
観測装置:Philips ToUcam Pro
     ビットラン冷却CCD BJ30L

観測所:美星天文台
望遠鏡:101cm反射(f=12m)
観測装置:CCDカメラ(SBIG ST-6)
フィルター:Schott の色フィルター組合せ 有効波長 半値幅
V: GG495(2mm)+BG39(3mm) 551.2nm 85nm
R: OG570(2mm)+KG3(3mm) 647.2nm 150nm
I: RG9(3mm)+WG305(2mm) 806.0nm 170nm

観測所:飛騨天文台(赤羽徳英)
望遠鏡:65cm屈折(f=9m×2)
観測装置:CCDカメラ(スペクトラソース HPC1S)
フィルター:干渉フィルター(I:751nm,R:657nm,G:549nm,B:436nm)

観測所:姫路市宿泊型児童館「星の子館」
望遠鏡:90cm反射(fl=14.32m)
観測装置:CCDカメラ(フォトメトリクス社(アメリカ)冷却CCDカメラ
(ペルチエ素子水冷式、トムソン社製100万画素クラス2)
フィルター:ジョンソン・システム準拠B,V,Rc(Bessell, 1995)

観測者名:前田和儀
観測地:京都府亀岡市南つつじヶ丘
望遠鏡:富士オプティクス 35cm F=5.0 Newton 赤道儀 NJP
    タカハシ FCT125 F=5.6 赤道儀 EM200
  観測装置:デジカメ NEC ピコナ モノクロ
     ToUcam pro
     冷却CCD BJ32C、BJ32L
     OKAI Type 2 フイルター

    観測所:みさと天文台
観測者:田中英明(みさと天文台)
望遠鏡:105cm反射(f=8m)
観測装置:3CCD カラービデオカメラ(SONY DXC-755)(Or25mm レンズ拡大)
フィルター:無

観測者:森田光治
観測地:滋賀県守山市立田町
望遠鏡:D205mm FL1571mm(F7.6) Newton (主鏡、鏡筒とも自作)
架台タカハシEM200
観測装置:NECピコナ(改造)、画像処理ソフト(池村俊彦氏作)

観測者:柚木健吉
望遠鏡:20pニュートン反射、25pシュミカセ
観測装置:ST-5c,ToUcam Pro
フィルター:IDASフィルタータイプ3,HOYA B-370,HOYA R-72

観測者名:米山誠一
観測地:神奈川県横浜市
望遠鏡:Vixen R200SS-GPD(口径200mm、F4)
観測装置:ToUcam Pro


CONTENTSへ戻る

火星共同観測のページへ戻る
Back to the Mars Co. Obs. Page


西はりま天文台のホームページへ戻る

Back to the NHAO HomePage(English)
Back to the NHAO HomePage(Japanese)