質問コーナー
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その22(2013年度第9〜11回)
Q:光電子増倍管と光電効果
・光電効果を起こした部分は電子を放出することにより結合が壊れたりしないですか
・光電子増倍管で放出電子を増やしていくと中間電極の電子数が無くなりませんか
・イメージ増幅管で発生するイオンノイズを無くすために希ガスを封入したらどうでしょう
A:まず光電効果によって、電子を放出させる物質が破壊されるかどうかですが、物質が導体か半導体か絶縁体かによって違ってきます。
固体物質で化学結合に寄与しているのは束縛準位や価電子帯にいる電子です。光電面は外部光電効果で電子を物質外にたたき出します。絶縁体では電子の補充は無理、アルカリ金属を使った光電面でも代わりの電子の補充が完全には望めないので徐々に破壊されていきます。つまり光電面や光電管には寿命があります。
価電子帯から伝導体(電気が流れるエネルギー準位)へ電子を励起する内部光電効果では、電子の補充は迅速に行われます。従って破壊されることは殆どなく、寿命を気にする必要がありません。
次に光電子増倍管の中間電極から電子を増やしてたたき出す場合ですが、光電管の中は電圧をかけた回路になっていて電流が流れますから、電極への電子は補充され無くなることはありません。ただし中間電極への電子の衝突エネルギーは(外部光電効果を起こす以上の)高いものですから電極を破壊していきます。従って光電子増倍管やイメージ増幅管には寿命があります。およそ数千時間ほどです。強い光を当てると過剰な高エネルギー電子が大電流になって流れるため、あっという間に壊れてしまうこともあります。
光電管、光電子増倍管、イメージ増幅管は真空管ですから内部は真空になっています。真空とは言っても宇宙空間の真空に比べると何千倍も分子密度が大きいので、何らかのガス分子は存在します。それが希ガスに置換封入されたものだとしても、電子の衝突エネルギーは大きい(増幅管、増倍管の電極間電圧は数千ボルト以上)ありますので楽勝でイオン化します。それともう一つ、真空管内部では、真空にされた容器内部の部品からチョロチョロとガスが蒸発していきます。周囲が真空なのでこういうことが起こります。光電子増倍管やイメージ増幅管では電子が衝突する中間電極から電子だけではなく原子もたたき出されてきます。これをスパッタリングといいます。これによっても真空管内の真空は徐々に悪くなっていきます。そういうことでもこれらの部品には寿命があります。
Q:CCDカメラのノイズについて、ピクセルに蓄積された電子が隣のピクセルに動いてしまうようなノイズはありますか
A:基本的にピクセルとピクセルを隔てている電極の電位ポテンシャルは深いので、通常の露光で電子が別のピクセルに移動するようなノイズはありません。ただし露出オーバーになると話しは別です。CCDカメラで言う露出オーバーとは、ピクセルに貯められる電子数を超えて露光してしまうことです。CCD素子には製品毎に1ピクセル内に蓄えられる電子数(最大蓄積電荷数)があります。それはピクセルを構成しているフォトダイオードの大きさ(ピクセルサイズ)で決まります。おおよそ数万〜数十万電子くらいあります。露出オーバーにして電荷がピクセルの容量を超えて発生してしまうと、電子はコップの水が溢れるように隣のピクセルに移っていきます。この現象をブルーミングといいます。
その他には、CCDでは電荷を読み出し口のアンプ回路まで転送する際に、電荷を隣のピクセルに移動する時の取りこぼしが発生します。非常に低い確率ですが確実に発生するため、露出不足の画像では、その取りこぼしが筋になって目立つことがあります。この現象をスミアと言います。
2013年6月29日土曜日