伊藤洋一
兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 天文科学センター センター長、教授
English 論文リストなど
1. 研究テーマ : 星惑星形成過程と太陽系外惑星の観測的研究
1995年以来、太陽系外惑星はどんどん発見されています。
そこで私も、太陽系外惑星を観測しています。競争の激しい研究分野ですが、調べれば調べるほどわからないことが見つかる興味深い研究分野です。
ところで、こうした太陽系外惑星は、我々の太陽系とは全然違った姿・形をしています。
なぜなのでしょうか?
その鍵は惑星が形成された時にあると思い、生まれたての恒星や太陽系外惑星も観測しています。
1-1. 太陽系外惑星の大気
トランジット現象を起こす太陽系外惑星は、トランジットの深さを複数の波長で比較することにより惑星の大気組成や構造などを調べることができます。西はりま天文台の「なゆた望遠鏡」には近赤外線の3波長を同時に観測できるNICという観測装置があります。これらを使って太陽系外惑星の観測を続けています。将来は、太陽系外惑星の天気予報ができるといいなと思います。
1-2. 若い恒星、褐色矮星、微小浮遊天体の探査
生まれたての(とはいっても年齢は100万歳くらい)恒星の観測を20年以上続けています。特に「おうし座分子雲」で生まれている若い恒星については何本も研究論文を書きました。太陽程度の重さを持った恒星の誕生の仕方は、おおよそのことがわかってきました。しかし、質量の獲得方法、彩層の活動度、正確な年齢決定など、調べるべきことはまだまだたくさんあります。私は「恒星分野」の手法を「星惑星形成分野」に適用しながら、恒星の形成過程を解明しようとしています。
恒星の形成過程を研究するうちに、変な天体を発見しました。
惑星は星の周りを回っている天体ですが、星の周りを回っていない、一人ぽつんと生まれる小さな天体があることがわかってきました。
そうした天体はある程度重ければ「若い褐色矮星」と呼べるでしょう。
一方で、木星の数倍しか重さがない天体は軽すぎて名前のつけようがありません。
こうした天体を「浮遊微小天体」と新たに名づけ、その生まれ方や、数の頻度などを調べています。
現在までに行なった、様々な星形成領域の観測研究から、このような質量の小さい天体は、太陽程度の重さの恒星が生まれている場所ならばほとんど全ての領域で生まれていることがわかりました。
左の図は大質量星系星領域S106の近赤外画像。きれいな反射星雲は、中心の若くて重い恒星が作っています。
この写真の中にたくさんの浮遊微小天体が含まれています。
1-3. すばる望遠鏡のためのステラーコロナグラフCIAOの開発
生まれたての太陽系外惑星を効率良く発見するために、すばる望遠鏡のためのステラーコロナグラフを開発しました。
僕は主にソフトウエアの担当でした。
写真は、すばる望遠鏡に取りつけた完成当初のCIAOの様子です。
この装置を作った頃は、毎日マウナケアの山頂に行って大変でした。装置は一辺が2mくらい、重さが2トンもあります。
1-4. 原始惑星系円盤の観測
CIAOを使って、惑星系の母体である原始惑星系円盤の観測を行ないました。
この図は、GG Tauという前主系列星に付随する原始惑星系円盤を表わしています。
こうした原始惑星系円盤の中から惑星が誕生するのだと考えられています。
ちなみにこの画像は、ハッブル宇宙望遠鏡で撮った画像よりも空間分解能にすぐれ、より高いS/Nになっています。
そこで、CIAOを使って原始惑星系円盤や原始惑星の探査を始めました。
それなりにたくさんのデータが撮れたのですが、解析がめちゃめちゃ大変でした。
1-5. 太陽系内の小天体の観測
他の惑星系の形成を理解するためには、まず私たちの太陽系の姿を知る必要があります。
私たちは、小惑星やカイパーベルト天体、オールト雲に着目して研究をしています。
写真は、すばる望遠鏡で撮った天王星の近赤外画像です。
天王星本体にはメタンがあるため、衛星や環に比べ相対的に青く見えます。
2. 助成
上記研究は、住友財団の基礎科学研究助成(2001-2003)、伊藤科学振興財団(2003)、科学研究費(若手B、基盤C)などを受けて行なわれています。 みなさま、ありがとう。
3. 観測
ぼくは「観測屋さん」です。観測しないと何も始まりません。今までに、岡山、野辺山、ハワイ、アメリカ本土、インド、南アフリカなどで観測を行ってきました。
4. 兵庫県立大学理学部物質科学科の学生さんへ
卒業研究で宇宙を学びたい人はいませんか?
卒業研究のテーマは、
このページとこのページ
を参考にしてください。
わからないことがあればメール(yitoh @nhao.jp)をください。
5. 大学院の進学先を悩んでいる人へ
西はりま天文台で宇宙を学んでみませんか?
研究テーマは
このページとこのページ
を参考にしてください。
日本一贅沢な環境で観測天文学を行うことができます。
疑問点があればメール(yitoh @nhao.jp)をください。
6. 生い立ち
- 1969年5月23日に東京都港区で生まれる
- 東京大学理学部天文学科卒業(学部時代はほとんどオーケストラしかやっていない)
- 東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 博士課程修了
- 国立天文台COE研究員(すばる)
- 学術振興会特別研究員
- 神戸大学自然科学研究科、助手
- 神戸大学理学研究科、准教授
西はりま天文台
tel: 0790-82-3886
fax: 0790-82-3514
Last modified: 2024/04/09