(2)観測テーマ
(1)観測・研究テーマを予め定め、それに適した観測をする。
(2)できる限り長時間観測し、観測シーズン終了後に蓄積されたデータの中から面白い現象を選び、それについて調べる。
の2つに大別される。火星のみならず、惑星の現象の観測では長期にわたる連続観測が望ましいのであるが、その時間がとれないのが常である。効率的に火星観測をしようとする場合、(1)のようにある特定の地域あるいは現象に的をしぼるのも一つの方法である。火星と地球の自転周期の関係で、火星の同一地域は5週間ごとに巡ってくるから、5週間毎に4-5日間連続して観測すれば,同一地域の連続観測ができる。そこで地上から観測できそうな現象を挙げてみることにする。
A.2次元ディテクターによるイメージ観測
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B.光電測光 |
火星低緯度帯を取り巻く雲の帯
北半球の晩春から盛夏では、低緯度帯を取り巻く雲の帯が形成される。雲の帯は朝方と夕方となっている地域では明るく、日中の地域では淡くなっている。また、同じ日中でも場所により明るさが異なる。同一地点の雲の日変化を観測すること、この雲の帯が消滅する時期を観測からとらえることなど、各自の興味に応じた観測が可能である。
いづれも青色光による像である。disk center 付近の明るい斑点はオリンパス山に発生した昼雲である。この右隣の雲もタルシス3山の一つ(Ascraeus Mons)に懸かる昼雲である。Olympus 雲の斜め右上の明るい斑点はAlba に発生した雲で、朝から夕方まで見えている。昼雲は毎日同じ場所に発生し、その繰り返しが4ヶ月以上も続いている。
北半球がはるから夏を迎える頃、タルシスからアマゾンにかけては、朝雲,夕雲,昼雲が見られるであろう。この地方の朝雲の最盛期には朝雲の高度は低く、オリンパス山などが雲の上にでているのが観測される可能性がある。昼雲は朝雲が衰退する頃から明るく見えてくる雲で、午後中見えている。昼雲はオリンパス山などの高い山に発生する。これらの雲の日変化の観測から雲の気象学的性質、光学的性質を調べることができる。
右側の像が青色光で撮影されたものである。北極冠以外の明るい部分は雲である。上段の中央やや左下の明るい部分はOlympus Monsと3 Tharsis mountainsに囲まれた朝雲である。朝雲の中でも最も明るく目立つ。3つの小さな暗い斑点はOlympus Mons, Ascraeus Mons, Arsia Monsの位置にある。左側の像は赤色光で撮られたもので、青色光による像との比較のためにいれてある。
Full Image(48KB)
Olympus Mons & 3 Tharsis mountains(14KB)
Olympus Mons, Ascraeus Mons, Arsia Mons(12KB)
北極雲は初秋から早春まで北極地方を覆うものである。この極雲はどのように発達して北極地方を覆うのかは分かっていない。一説には、先ず中緯度帯に雲が発生し、それが極地方に移動して安定した極雲へと成長するといもいわれているが、定かではない。この季節に連続観測をすると、北極雲の成長の様子を見ることができるであろう。
像の上端の明るい模様が北極雲である。下側の明るい模様は南極冠である。図2の右上の像とほぼ同じ面がみえているから、両者を比較すると季節による見え方の相違がわかる。北半球が冬を迎える頃になると、このような状態が見られるはずである。(岩崎恭輔氏がインドネシアのボスカ天文台にて撮影)
南半球が冬の季節には、中緯度帯の盆地には雲がかかったり消えたりしている。特にヘラスの雲は目立つ。中緯度帯の盆地にかかる雲の発生時期と消滅時期をとらえることは、南極雲との関連を調べる上で大切な観測である。今回の南極地方は観測しにくいが、中緯度帯盆地の雲は容易に観測できる。それらは北半球中・低緯度帯の雲のように日変化をしているか否かの確認は、その雲の性質を調べる上で必要である。
上段は青色光による像である。低緯度帯を取り巻く明るい帯は雲である。像の下側の明るい大きな斑点は Hellas にかかる雲である。南半球は真冬であり、このヘラスの雲は極雲と似た性質を持っている。下側の像は赤色光によるものである。
火星の南半球が春を迎えると南極雲が薄くなり、極冠が見えてくるであろう。そのときの明るさと色の微妙な変化を観測して欲しい。晩冬における極雲と極冠との区別は意外と難しいものである。眼視と撮像とを平行して行うと、明るさや色の変化をとらえる事ができ、極冠の出現日を決定できるであろう。
一般には、450 nm 以下の短波長では地面のコントラストが極端に低く、極冠以外の模様は識別できない。しかし、時には短波長でも地面の模様を識別できることがある。短波長の青色で地面の模様が見えることから、この現象を blue clearing と呼んでいる。Blue clearing は衝の頃に多く観測されている。Syrtis Major は低緯度帯にあり、目立ちやすいので、blue clearing の観測には最適である。
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ローカルな反射能の観測
例えば、Syrtis Major, Arabia 等代表的な地点の反射能は測定されているが、大部分の地点の正確な反射能は未だに求まっていない。その上、火星の暗い模様の反射能は季節変化をするので、各季節の反射能を求めておく必要がある。それには長期にわたる観測が要求される。極冠の反射能の測定
極冠の反射能も未だ正確に求まっていない。そのため測定された反射能は、カタログとなるだけでなく探査機による観測のキャリブレーションを行う上で貴重なものとなる。極冠の反射能も春先と晩春では変化しているようである。極冠の反射能の正確な測定は、極冠の形成モデルを左右するほど価値あるものである。極雲に覆われている晩冬から極冠が出現する早春までの南極地方の光度変化の測定は極雲末期の状態を知らせてくれる。雲の発達
黄雲や白雲の明るさの時間変化の測定から,雲の発達の様子を推定できる。光電測光でも各波長(少なくとも赤,緑,青)で観測する事が大切である。また、撮像観測と同時に行うと、火星全体の様子から特定の地点の観測を論じることができるので、光電測光観測の日程が決まったら、共同観測参加者にお知らせ願いたい。火星全体のbrightness
火星全体のbrightness の変化を観測するのも面白いと考える。火星には、月ほど顕著ではないが衝効果がある。一例としてbrightness の位相角に対する変化を観測し、過去の観測と比較して、衝効果にも季節変化があるか否かの検証も価値があると考える。もし季節変化があるとすれば、それは地面のアルベドーの変化によるのか、または大気中の雲の影響によるものなのかなど、色々な疑問が出て来る。衝効果は位相角が5度以下になると大きくなると言われているが、衝前後の10度以内の期間を観測できれば、衝効果を議論するのに十分な資料が得られるはずである。
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