・「6分ジャンプ」の原因は何か(討論)

6分ジャンプは赤径方向の追尾に関して生じる現象である。しかも正確に6分間隔で生じる。これまでハッキング日記の裏で行われてきた関係者による電子メール討論を踏まえて、予想される「6分ジャンプ」の原因について諸説をまとめておく。

6分ジャンプの発生

 赤径軸駆動系の概念図

 ウオームホイールはウオームギアが1回転する度に、歯1枚分回転することによって駆動される。60cm望遠鏡には、現在、ウオームホイールに半径72cm,歯数240枚のものが使われている。6分ごとにジャンプが生じるというのは、実はウオームギアが1回転しウオームホイールの歯が1枚入れ代わる周期と一致しています。

360°/240枚=1.5°/枚 => 1.5°赤径軸が回転するのは時間にして“6分”

1.ウオームホイール,ウオームギヤの噛み合わせが悪い
 ウオームギアとホイールのピッチに誤差があり、ウオームギアの1回転ごとに噛み合わせがガクガクして起こる。以前、60cm望遠鏡は360枚のホイールを使っていたことがあり、当時追尾に問題があったためウオームホイールを改修し、現在の240枚のホイールになった。そのためにピッチが違ったんじゃないか。(我々の最初の懸念)

反論)ウオームギアとホイールは、本来セットで製造されるもので、まったく異質なものを組み合わせることはない。また組み合わせようにも噛み合わない。60cm望遠鏡が360枚のホイールを使っていた時には“4分ごとにジャンプ(360枚のホイールに相当する周期)”が起こっており、その改善の為にウオームを疑って改修した。それでまだジャンプが起こるということは、結果としてこのギアが原因ではない。(みさと天文台/元西村製作所 坂元氏)

2.ウオームギアの軸受けが甘くウオームギアが左右にズレる
 以前、60cm望遠鏡のウオームギアの左右のズレをダイヤルゲージで測ったことがあった。この時の測定は、ウオームギアのズレを検出しており、これがなんらかの原因になっていると考えられる。しかもズレ量はジャンプする角度とオーダーが合っていたと記憶している。このズレが原因ならば、星像は前後するような振動的なジャンプをするか、ウオームギアの左右ズレの遊びの範囲で一方にジャンプして行っても、何れ頭打ちになって正常に戻るはず。(みさと天文台/元西村製作所 坂元氏)

反論)我々の経験の範囲(30分〜1時間露出)では、星像が行ったり来たりする現象は報告されていない。またこの範囲では、星像は、一方方向にエンドレスにジャンプをくり返しているようである。

3.ウオームギアの回転が周期的に一瞬でも緩めば、エンドレスにジャンプが起こる
 原因をどのギア,軸受けに求めるかは別として、もしモーターが一瞬止まってしまう(ありえないだろうけど)ような現象を仮定すると、2秒角だけ星像をジャンプさせるのに要する時間はおよそ

“0.13秒”(赤道付近、もちろんδによって変わる)

になる。非常に短い時間スケールで現象を起こせることがわかる。例えば、ウオームギアの回転が10%減になる現象が起こっていても1秒間くらいの現象なら説明できる。(圓谷)

反論)モーターが余りに減速したりすると止まってしまう。しかし、西はりま天文台60cm望遠鏡に使われているサーボモーター(特別らしい...)ではあり得ないが、殆どのサーボモーターでは負荷がかかっても、スピードをおとしたりするのでこういうことはあり得る。

 このような議論を経て、いよいよ坂元氏がダイヤルゲージを持ち込んで(西はりま天文台は、精度の良いダイアルゲージを所有していない)徹底的に調べることとなった。