・再現性テスト2(ズレを測る精度を上げる)と大気差補正のチェック

 さて60cm 望遠鏡の機械精度を見る為には、ズレの測定精度を一桁は上げないといけない。従って今度は撮像によって位置ズレを測定する必要がある。しかしここで問題なのは、CCD でもビデオでも、撮像できる写角は3〜4分角しかなく1月18日と同様の手順で実験をすると、低高度の星が写角内に入ってこない危険がある点である。

 みさと天文台の坂元さんの提案は、天頂付近の星を撮ったあと望遠鏡を低高度の星に一旦向けるが、その星の撮像やセンタリングを行わず直ぐに天頂の星に戻して、その星の位置ズレを撮ったらどうかというものでありました。しかし、前回の測定とは、手順が若干違うことにより測定条件が変わる為、その条件の違いが位置ズレの測定に影響しないことを検証しておかなければならない(下図)。

−コンセプト−
 上図の左右の経路の違いで、pointing の再現性に違いが見られるか。この検証を目視によって行う。

−コンセプト−
 大気差補正の為の温度パラメータを変えながら系統的ズレの出方に傾向が見られるかを調べる。

1月26日(観測:鳴沢,圓谷)
 天頂付近の星ιAur と南中している低い星(観測時高度約17度)γCae を交互にポインティングして、位置ズレを確認する。

実験1

手順1:ιAur をポインティング、センタリング
手順2:ドーム内気温より大気差補正のパラメータ =>気温,気圧(7.5℃,1013mb)
手順3:座標修正
手順4:γCae のポインティング(センタリング なし)/経路1
手順4’:γCae のポインティング、センタリング/経路2
手順5:ιAur のポインティング、センタリング => 座標の読みを記録
手順6:手順4(4’),5を5回ずつくり返す

結果1
 青い線が、別な天体の pointing のみで元に戻す経路1。赤い線が、前回と同様に南の低高度の星を centering して戻す経路2で、下図の点の色はそれぞれの経路で得られた再現性である。

これを見ると、天頂付近にある天体に pointing しなおす際に、南天の低い星に対して僅かな centering 修正をするかしないかは再現性に影響しない(少なくとも眼視で確認できるレベルでは。)ことがわかった。これでCCDカメラを使って pointing のより精度の高い再現性の計測ができることが保証された。

実験2

手順1:ιAur をポインティング、センタリング
手順2:ドーム内気温より大気差補正のパラメータ =>気温,気圧(7.5℃,1013mb)
手順3:座標修正
手順4:γCae のポインティング、センタリング => 座標の読みを記録
手順5:ιAur のポインティング、センタリング => 座標の読みを記録
手順6:手順4,5を5回ずつくり返す
手順7:大気差補正のパラメータ(気温)を変更(30℃,-30℃)
手順8:手順6,7をくり返す

結果2
 設定気温7.5℃,30℃,-30℃で、系統的なズレの出方に傾向があるかどうか調べたのが下図です。

そして御覧の通り、大気差補正の効果が捕まりました。「青=>緑=>赤」と気温の設定が下がると、δ方向の相対的なズレが小さい方に向かっています。これは気温の設定が下がるほど、望遠鏡が星本来の座標上の位置よりも上方を狙ってポインティングしたことを示します。大気差によって地平線近くの星は実際よりも浮いて見えますが、その度合いは気圧が一定なら気温が低い程大きくなります。グラフより大雑把に見積もると、60cm望遠鏡は、気温60℃の変化に対し約1分角分、望遠鏡を向ける高さを加減をしているようです。

詳しい記録(990126_NOTE.pdf