・そして99年度定期メンテナンス1

 西はりま天文台の望遠鏡は、毎年、梅雨の6月下旬に定期メンテナンスを受ける。今回のメンテナンスでは、これまでの6分ジャンプ現象の原因究明過程について説明し、なんとか改善をお願いすることにした。

6月28日(対応・報告:鳴沢) 
作業内容:要修理部品,メンテナンス部品の取り外しと打ち合わせ

(1)6分ジャンプ対策のため、ウォーム・ギヤ(軸受けを含むユニット)、中間減速ギア、モーターの一連のセットを持って帰ってもらうことになる。

 この時の話では、「中間減速ギアは、別の会社に特注で作ってもらったもので、西村よりも精度がいいはずなので、原因はウオ−ム・ギア(ユニット)にあると思われる」とのこと。

(2)副鏡、再メッキのため取り外し。また、フォーカス調整時に星像が直径2分角程度の円運動を起こし、フォーカス調整がポインティング精度に大きく影響している問題の検討のため、副鏡ユニット一式を持って帰ってもらうことにした。

 この作業中に、フォーカス・エンコーダーのセンサーが副鏡部分から外れていることが判明。エンコーダーの表示が当てにならなかったのはこれが原因。

(3)バッフル内の黒いフェルトはがれの件で、これも持って帰ってもらう。フェルトをやめて黒い塗装にしてもらうよう依頼。

 これがはげた原因も太陽を入れたためです。

(4)観測機器を付けても望遠鏡が北極星方向に向けられるよう、フィルターボックスを薄く改造してもらうため持って帰ってもらう。内蔵されていたオートガイダーテスト用のプリズムは取り外し。

 なお、このキャップ部分が溶けたのも、太陽を入れたことが原因です。

(5)その他
 AstorCam コントローラ用の電源ケーブルを床下を通してもらう。
 ウォームホイルのあたりからオイルが洩れていた。原因不明。

 

7月2日(対応・報告:圓谷、時政、鳴沢)
作業内容:修理,メンテナンス済み部品の再組み立て

(1)6分ジャンンプ関連
 持ち帰ってもらっていたウォームギヤ関連の一連のセット:すなわち、ウォームギアユニット、中間減速ギア、エンコーダ、サーボモータをすべてチエックした。東側の軸受け内のベアリングがゆるんで(磨耗)いたので交換したとのこと。その他には、悪いところはなかった。なお、ウオームギヤのシャフトとベアリングは西側の軸受けでは固定されていないことが判明した。これは熱によるシャフトの伸縮を逃がすための工夫。


60cm望遠鏡赤経軸駆動部ウオームギヤユニット模式図

 ホィールにかませて、ダイヤルゲージ(坂元君持参のより1桁少ない)をホィールにつけて、バックラッシュを測定すると 20μmだった。
 また前回のように、ウォームギアにダイヤルゲージをつけて軸受けの横ずれを測定すると(つむちゃんゆらゆら作戦)、10μm以上=>約5μmに減っていた。

# メーカーは以前のダイヤルゲージによる測定では、針を置いた部分が面精度の出ていない(凸凹している)ので、測定は信頼できないと言っていましたが、

・6分に1回、常に東方向に1μmづつという周期的な針のふれを示していた。
・基準面になってないというなら、ウオームギヤが1回転する間に、1μm以上の振幅でふらふらと針がゆれるはず。

と圓谷が実験ビデオを見せて否定。

# またメーカーと検討した結果、6分ジャンプの原因をウオームギヤの横ズレで説明するには、1μmという1回のズレ量では、2秒角ジャンプさせるのに足りない事が判明した。
 これはつまり、ホィール径が72cmなので

   arctan(1μm/72cm)=0.58秒角

となって明らかにジャンプ量に足りない。

 

(2) 副鏡関係
 再メッキされた副鏡をとりつけてもらい、光軸合わせ。(ちなみに副鏡も毎年再メッキなので、コーティングしていません) 副鏡系は、全てばらして調査してもらったのですが、いろいろな部分でネジがゆるんでいたとのこと。フォーカスエンコーダーも正常にもどった。
 またメーカーとの検討の結果、以下の3つの理由により、副鏡系はすべて交換した方がいいと結論した。

理由1: フォーカス・エンコーダの読み取り可能範囲がフォーカスの可動範囲より狭い。

理由2: 光軸調整機構の関係で、低高度に向けた時に、副鏡がたわむのでポインティング精度が良くない

理由3: フォーカス調整時に星像が直径2分角程度の円運動を起こし、フォーカス調整がポインティング精度に大きく影響している。その原因が、フォーカス調整時にシリンダーが前後する際、シリンダーを保持している精度が低いため、シリンダーそのものが味噌すり運動をしているためと考えられる。


60cm望遠鏡副鏡ユニットの模式図

(3)バッフル
 バッフル中のフェルトをはがして内部を黒くしてもらい、内部に遮光用リングが入る。

#バッフルをつけた視野が17’に対し通常用いている40mmアイピースの視野が17.6’。17’以上広い視野のアイピースなり検出器を装着すると視野がけられます。将来大フォーマットCCDを装着する時は要注意。

(4)フィルターボックス薄型化
フィルターボックスを薄くなり厚み10.7cm。ただしフィルターの表示に新たな問題発生。

#フィルターボックスをセットしてテストを行ったところ、なんとフィルターコントローラの表示が7または8(たまに9)にしかならなくなった。0番(ノーフィルター)の時はちゃんと0。フィルターコントローラの回路系だと思われる。

(5)その他
 サイドビューの光軸を調整。
 主鏡カバーの取り付けを検討依頼。
 フラットフィールド用白熱電灯保護用フードを作成してもらいトップリングに装着。