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NIC解析マニュアル のバックアップ(No.7)


(まだまだ編集中)

概要

  • ここでは、NIC で取得した撮像データ (偏光なし) の一次処理の流れを記す。
  • この内容は、下記の文献の一部を適宜修正・加筆の上まとめたものである。
  • 西はりま天文台内では、制御室の camera (42.55) にインストールされたスクリプトで自動処理できる。

全体の流れ

  • 撮像データの一次処理は下記の通りの流れで行う。
  1. ダーク差し引き
  2. フラット補正
  3. バッドピクセル補正
  4. ホットピクセル、ダークピクセル補正
  5. スカイ画像作成
  6. スカイ差し引き
  7. 縦縞パターン除去
  8. 画像位置合わせ
  9. 重ね合わせ
    ImageReduction_NIC.png
  • 上図は各段階での画像の例。(a) 生画像、 (b) 4までを行った画像、 (c) 5で生成したスカイフレーム (d) 6のスカイ差し引き処理後の画像、 (e) 縦縞パターン差し引き (7) 後の画像、 (f) 最終画像

1. ダーク差し引き

  • ダークフレームの取得手順 に従って取得したダークフレームを用いる。
  • オブジェクトフレームと積分時間を揃えたダークフレームを10-15枚程度使い、重ね合わせる。
  • camera マシン (制御室) にインストールされている自動スクリプトでは、3sigma clipping をした後で平均 (average) をしている。
  • ダークフレーム取得の際に、コールドシャッターの位置が適切でないと、光が入る。Pol 窓や Open 窓が入ってしまったフレームは、前もって削除しておく。
  • 重ね合わせたフレームを、オブジェクトフレーム (含・フラットフレーム) から引き算する。
    • 自動スクリプトで処理すると、*.da.fits という名前のファイルができる。

2. フラット補正

  • 検出器上の位置による感度のむらを補正する。
  • 通常、トワイライトフラットを用いる。フラットフレームの取得手順を参照。
  • マスターフラットを用いる場合には、camera の /home/nhao/nic/nicred.latest/common 以下にあるもののうち、日付の近いものを選んで用いる。
  • フラットの作成に関しては特別なツールを作ってはいない。上記以外は通常の手順をふめば良い。 - 手順としては以下の通り。
    1. カウントの高いフレームからダークを引く。カウントがほぼ同じフレームが複数あれば重ね合わせる。
    2. カウントの低いフレームにも同様の処理をする。
    3. (高カウントのフレーム) - (低カウントのフレーム) の引き算をする。
    4. 全体の平均が1になるよう、規格化する。
  • 几帳面にやりたい場合は、(3)-(6) の処理 (ホットピクセル・ダークピクセル補正)までをやってもいい。ただしどのみち後の段階でこれらはやることになるので、ここでやる必要は必ずしもない。
  • 規格化したフレームで、ダーク処理後のフレームを割り算する。
    • 自動スクリプトで処理すると、*.fl.fits という名前のファイルができる。

3 & 4. バッドピクセル補正、ホット/ダークピクセル補正

  • バッドピクセル (決まった位置に出る) は、IRAF/proto.fixpix 等を用いて補正する。
  • 各バンド(検出器)のバッドピクセルは以下の通り。フォーマットは x1 x2 y1 y2。すなわち、x1<x<x2, y1<y<y2 の領域をマスクし、そのすぐ外側のピクセルの情報を使って内挿する。2列だけの場合は x1 y1 すなわち (x1, y1) のピクセルをマスクする。
    • J band
      277 291 134 148
      186 191 229 236
      260 270 1017 1023
    • H band
      277 291 134 148
      186 191 229 236
      961 962 672 673
      1002 1004 652 654
      1005 1006 649 651
      966 967 612 619
      964 966 609 614
      1001 1007 646 654
      13 15 242 245
    • K band
      140 141 549 551
      162 163 806 807
      162 805
      163 804
      164 167 801 803
      162 170 795 800
      171 173 798 802
      186 191 229 236
      277 291 134 148
      320 321 586 589
      321 323 591 593
      778 779 682 688
      780 786 671 676
      779 780 677 680
      785 789 670 671
  • ホット/ダークピクセルは、IRAF/noao.imred.crutil.cosmicrays 等を用いて補正する。
    • L.A.Cosmic 等を使ってもいい。

5 & 6. スカイ差し引き

  • ここでいう「スカイ」は、いわゆるスカイというよりも、ダーク、フラットなどで取り切れない「うねうね」のパターンを差し引くといった方がが正しい。NIC のデータに対する対処療法的な操作。
  • 5. スカイ画像作成は、ディザー観測で得られた画像を重ね合わせることで行う。位置合わせはせずに median で重ね合わせる。(IRAF/imcombine 等)
    • 星の少ない天域であれば、オブジェクトフレームをそのまま用いることができる。
    • 星の混んだ天域を観測している場合には、なるべく近傍の星の少ない天域をスカイ用に別途撮像する。積分時間・モードは同じにする。
    • 視野内には数個程度の星があっても OK。
  • 6. スカイ差し引きは、基本的には単純にスカイ画像を差し引けばよい。(IRAF/imarith 等)
    • ただし、差し引く場合にはスカイ画像を各天体画像のスカイレベルを合わせるために、スケーリングしておく。

7. 縦縞パターン除去

  • NIC のデータには検出器由来の縦縞パターンが存在する。これも現状では対処療法的に引く必要がある。
    • ダーク、フラットなどで取り切れない。読み出し時の電圧の変化が原因と考えられている。
    • 前述の「スカイ」と違い、列ごとにほぼ一定の値を示す。
    • 下記の2つの方法がある。
  1. 星の少ない天域の場合 (Sampling 法)
    • 星の写っていない行 (典型的に 20-100行) を取り出して各列を縦方向に平均し、縦縞パターンのプロファイルを得る。
    • 同様の操作を上半分、下半分に対してそれぞれ行う。
  2. 星の多い(混んだ)天域の場合 (Median 法)
    • 画像の上下半分で、各行のカウントのメディアン (中央値) を取り、縦縞パターンのプロファイルを得る。
  • 縦縞パターンのプロファイルが得られたら、それをオブジェクトフレームから差し引く。

8 & 9. 位置合わせ & 重ね合わせ

  • 基準となる星の中心位置を測る。(IRAF/imexamine、SExtractor 等)
  • その基準星がディザリングセット内ですべて同一のピクセルに来るように、画像を平行移動する。
    • NIC はさほど視野が広くないため、ゆがみ補正などはひとまず考えなくてよい。
    • 当然、ローテーターの位置角を一定にしておけば、回転なども考えなくてよい。
  • 平行移動によって位置合わせが出来たら、重ね合わせる。(IRAF/imcombine 等)

履歴

  • 2018.03.28 新規作成 (斎藤)