・まずは再現性テストだ!

 良い望遠鏡の条件は?「口径だ!鏡面だ!!」といろいろ声が聞こえてきそうですが、何と言っても、「見たい方向へちゃんと望遠鏡が向き、ちゃんと星を追いかけてくれる」ことです。この先、この子(60cm 望遠鏡)のどんな癖を調べるにせよ、望遠鏡を星に向ける癖の再現性をおさえておくことは大事ということで、二人(ナルナルと私)で2日ほどかけて初めの一歩を踏み出しました。

−コンセプト−
 オブジェクトを指定して導入後、アイピースを覗いてセンタリングを行い、コントローラの表示でα,δの値がどれだけズレるかでポインティングの再現性を見よう。

1月13日(観測:鳴沢,圓谷)
 使用するアイピースの視野直径を測って、目視でのセンタリングによるポインティング誤差の上限を押さえる。オブジェクトは観測時間に天頂付近にあったカペラを使った。

手順1:カペラを視野中央にポインティング後、東端の外に出し、トラッキングを止める。
手順2:カペラが視野の東端より現れてから、中央を横切り、西端へ隠れるまでの時間を測定。
手順3:手順1,2を5セット実施

結果
40mmアイピース:φ17.6 arcmin,誤差2.8 arcsec(ナルちゃんの目測とピタリ)
20mmアイピース:φ12.6 arcmin,誤差0.86 arcsec

結論
 覗きやすさから今後の実験では、40mmアイピースを使うことにする。目視での誤差として、センタリングは視野中心より直径1.5 arcmin のサークル内には納まるだろうと上限を見積もる。

詳しい記録(990113_NOTE.pdf

 

1月18日(観測:鳴沢,圓谷)
 天頂付近の星β Per(Algol) と南中している低い星(観測時高度約20度)δ For を交互にポインティングして、位置ズレを確認する。

手順1:Algol をポインティング、センタリング
手順2:ドーム内気温より大気差補正のパラメータ =>気温,気圧(8℃,1013mb)
手順3:座標修正
手順4:δ For のポインティング、センタリング => 座標の読みを記録
手順5:β Per(Algol)のポインティング、センタリング => 座標の読みを記録
手順6:手順4,5を10回くり返す

結果
どちらのオブジェクトに関しても、α,δに系統的なズレが出た。

Algol に関しては、α方向に+5s(読み),δ方向に+0.5’(読み)
δFor に関しては、α方向に−10s(読み),δ方向に+1.8’(読み)

上記平均値に対する10回の測定の分散より、誤差は直径0.6 arcmin 内のサークル程度。平均値で表された系統的なズレはこれより優位なものである。下図を参照。

詳しい記録(990118_NOTE.pdf

 

考察
 まず測定値のバラつきの原因であるが、これは、目視による誤差だろう。エンコーダーの読みは、殆ど最後の桁まで同じような値を示し、グラフの測定点は御覧のように量子化している。系統的なズレの原因であるが、このデータと経験のなさからは、判断がつきかねる。但し Algol のズレに関しては、天頂にあり大気差補正の影響は殆どないであろうから、原因を他に求めることができるだろう。これが機械的問題(これも考えれば幾つもあるだろう。それらのどれが卓越してるかは現時点では判断できない...それが経験のない素人というものだ。)とかもしれないし、ズレ量がグラフ中の誤差楕円1ヶ分ということを考えると、測定開始前に行った座標修正時のセンタリングのズレを反映している可能性だって捨てきれない。

 

とにかく、これから同様の実験をくり返し実行するつもりです。とりあえず次回は、大気差補正の為の温度パラメータを変えながら系統的ズレの出方に傾向が見られるかを調べます。できれば、オブジェクトも南中近くの星を高度のバリエーションを取って幾つか...。天頂付近の星のズレ方に関しては、何回か実験をするうちに傾向がつかめる(実験毎、座標修正毎、どの方向から天頂に戻したか etc)だろうと思います。

 

補足)ポインティング精度は、追い込みもやってないので悪いのは仕方ない、でも再現性は思ったよりあるよう(少なくとも目視でやるレベルに対しては...)です。

1月20日補足)この実験で議論相手になってくれている「みさと天文台」の坂元 誠さんの指摘で、次のことを調べる目標ができた。

60cm望遠鏡で星を追尾する時に生じる「6分ジャンプ*」という現象は、機械精度の悪さが見えているのではないか?

これについて確かめるには、機械についての再現性のない誤差(いわゆるガタ)を見る必要がある。故にズレの測定精度を一桁は上げないといけない。目視による位置ズレの測定から、撮像による位置ズレの測定にする必要がある。