2022年度なゆたユーザーズミーティング
7月25日に開催予定(zoomを用いたオンライン形式)の兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 天文科学センター(西はりま天文台)が運用する 2mなゆた望遠鏡のユーザーズミーティングのご案内です。
本ミーティングでは、なゆた望遠鏡の運用報告や科学的成果の発表と共に、ユーザーの皆様からのご意見などをお待ちしております。なゆた望遠鏡で観測された方の積極的な発表をお願いします。また、将来、なゆた望遠鏡を使って観測を行いたいと考えておられる大学院生や研究者の方々、望遠鏡の運用や活用に興味のある方など多くの方の参加をお待ちしております。
- 以下のWeb申し込みフォームに必要事項をご記入の上、提出してください。
- 参加申し込みフォーム(締め切り7月22日)
開催日時:7月25日午後 - なゆた望遠鏡運用報告(13:00-13:40)
- 13:00-13:10 「西はりま天文台の活動報告」伊藤洋一(兵庫県立大学)
- 13:10-13:20 「なゆた望遠鏡の状況と運用報告」戸塚都(兵庫県立大学)
- 13:20-13:30 「精密偏光観測装置POPOの開発状況」高橋隼(兵庫県立大学)
- 13:30-13:40 ショートトーク(ポスター)
- P「可視光撮像分光偏光装置 WFGS2の性能評価について」戸塚都(兵庫県立大学)
- P「NIC新パイプラインによる測光精度向上の試み」斎藤 智樹(兵庫県立大学)
- P「恒星フレアのHα輝線を検出する25cm自動望遠鏡の開発」井出善心(兵庫県立大学)
- 科学成果(13:40-16:25)
- 13:40-13:55「半分離型食連星IU Perの物理量の導出」佐々井祐二(津山工業高等専門学校)
- 13:55-14:10 「なゆた望遠鏡MALLSによるBe星δ Sco伴星の近星点通過時における高分散分光観測」石田光宏(横浜市立戸塚高等学校)
- 14:10-14:25「地球近傍小惑星(137805) 1999 YK5マルチバンド偏光観測」黒田大介(日本スペースガード協会)
- 14:25-14:40「(3200) Phaethon Polarimetry in the Negative Branch」Jooyeon Geem(Seoul National University)
- 14:40-14:55「NIR Polarimetry of Large Asteroids」Yoonsoo P. Bach(Seoul National University)
- 14:55-15:10「休憩」
- 15:10-15:25「ロケット実験CIBER-2の上空での感度較正を目的とする星の絶対フラックス測定」松浦周二(関西学院大学)
- 15:25-15:40「低質量星及びコンパクト天体を伴星に持つOB型星の連星探査」森谷友由希(国立天文台)
- 15:40-15:55「狭帯域測光探査で発見された金属欠乏星候補の分光追観測」岡田 寛子(甲南大学)
- 15:55-16:10「なゆた望遠鏡NICによる遠方クェーサーの変光調査」関根 章太(早稲田大学)
- 16:10-16:25 ショートトーク(ポスター)
- P「可視光分光装置MALLSを用いた恒星の化学組成調査」古塚来未(兵庫県立大学)
- P「周期的な強度変動を示す6.7 GHzメタノールメーザーの近赤外線モニター観測」岩田悠平(国立天文台)
- P「太陽系外惑星TrES-1bの多波長トランジット観測」植野雅々(兵庫県立大学)
- P「孤立楕円銀河NGC4636の偏光観測」戸塚都(兵庫県立大学)
- P「SMOKA の現状と今後の計画」小野里宏樹(国立天文台)
- 16:25-16:40「休憩」
- 中小口径望遠鏡の利活用(16:40-17:15)
- 16:40-16:55「ぐんま天文台150cm望遠鏡 2022年の現状」橋本 修(ぐんま天文台)
- 16:55-17:10「中央大学天文台CHAOでの可視光測光・分光望遠鏡PHASTの構築」根本 登(中央大学)
- 17:10-17:15 ショートトーク(ポスター)
- P「法政大学二連望遠鏡HOTATEと星野村空き家天文台計画」田中幹人(法政大学)
- 将来計画と議論(17:15-17:30)
- 17:15-17:30「(仮)現状の問題点や今後求められることなど」伊藤洋一(兵庫県立大)
- ポスターセッション(17:30-18:00)
- ポスターごとにブレイクアウトルームを準備します
- ポスター発表のファイル形式は自由です(ファイルは公開予定です)。
- ポスターのファイルへアクセスできるようにリンクを準備します。
zoom会議室の URL は参加・発表申込者にお伝えいたしました。
申し込んだにもかかわらず連絡が届いていない方はお知らせください。
なゆたUMに続いて(7/26-27)には、せいめいUMが開催されます。連続開催と
することで国内の共同利用望遠鏡について関連研究者が集中的に考え、
相互に意見交換することのできる貴重な機会となることを期待しております。
プログラム
アブストラクト
「 なゆた望遠鏡の運用」伊藤洋一(兵庫県立大学)西はりま天文台のこの一年間の活動について報告する。西はりま天文台は6年前に文部科学省から共同利用・共同研究拠点に認定された。2022年度からの6年間も拠点としての認定を更新され、さらに2024年度までは機能強化支援拠点にも認定された。講演では、この先3年間の構想についても述べる。
「なゆた望遠鏡の状況と運用報告」戸塚都(兵庫県立大学)
この1年間のなゆた望遠鏡の設備状況や運用状況についてご報告いたします。
「精密偏光観測装置POPOの開発状況」高橋隼(兵庫県立大学)
西はりま天文台では高速位相変調を用いた精密偏光観測装置POPOを開発している。現時点での進捗を報告する。
「可視光撮像分光偏光装置 WFGS2の性能評価について」戸塚都(兵庫県立大学)
現在、なゆた望遠鏡のカセグレン焦点にNICと共に設置されているWFGS2は、可視光撮像分光偏光観測が行える観測装置である。共同利用観測での利用も始まっていることから、今回WFGS2の性能について紹介する。
「NIC新パイプラインによる測光精度向上の試み」斎藤 智樹(兵庫県立大学)
NICによるz~7 QSOs の検出成功を受け、系統的なモニター観測に向けた測光精度向上の試みを続けている。これまでに細かな改善により、約2-3倍の精度向上を実現し、また新たにubercalibrationという手法を用いて、(理想的な条件なら)さらに2-3倍の精度向上を実現した。これらを実装した新しいパイプライン開発の現状を報告する。
「恒星フレアのHα輝線を検出する25cm自動望遠鏡の開発」井出善心(兵庫県立大学)
恒星フレアとは恒星表面で起こる爆発現象のことであり、発生の予測が困難なため、発生直後の観測例は多くない。そこで、恒星を夜間モニターし続け、フレアを検出する自動望遠鏡を作成している。口径25 cmの市販の望遠鏡に透過光の中心波長が656.3 nmで半値幅が3 nmのHα干渉フィルターを取り付けた。Rバンドで12等級の天体を露出時間5分でS/N=40で撮影できる。望遠鏡とカメラを制御するソフトウェアはINDI、PHD2、CCDCielを組み合わせて開発し、指定した天体を自動で観測できる。講演では自動化の詳細と今までの観測結果について述べる。
「半分離型食連星IU Perの物理量の導出」佐々井祐二(津山工業高等専門学校)
食連星の測光データ(小口径望遠鏡+冷却CCDカメラ)で物理量の比が得られる。絶対値を得るためには,視線速度を生成する分光データ(分光器)が必要であるが,なかなか取得が困難である。そこで,教育現場でも取得可能な測光データに情報を追加しスケールを組み込み解析を行いたい。
「なゆた望遠鏡MALLSによるBe星δ Sco伴星の近星点通過時における高分散分光観測」石田光宏(横浜市立戸塚高等学校)
Be星(カシオペヤ座γ型変光星) は赤道周りにガス円盤を作るが、その生成・消滅のメカニズムは詳しく分かっていない。近年、Be星プレオネ(離心率0.6~0.7)において、伴星が近星点を通過する前後の高分散分光観測で、水素輝線プロフィールの変動が複数報告されている。このように、Be星伴星の近星点通過時における高分散分光観測は、円盤のメカニズムを探る上で有効な手段となりうる。本研究では、2022年4月中旬におよそ10年ぶりに伴星が近星点を通過し、プレオネより大きい離心率(~0.9)を持つδ Scoの高分散分光観測を行う。使用する装置は、西はりま天文台の2mなゆた望遠鏡に搭載された可視光中低分散分光器MALLSである。本発表では今後の観測に向けた改善点や展望を述べる。
「地球近傍小惑星(137805) 1999 YK5マルチバンド偏光観測」黒田大介(日本スペースガード協会)
2022年2月、3月に共同利用観測として実施した小惑星1999 YK5の可視偏光撮像観測について、解析の進捗を報告する。
「(3200) Phaethon Polarimetry in the Negative Branch」Jooyeon Geem(Seoul National University)
We report on the first polarimetric study of (3200) Phaethon, the target of JAXA's DESTINY+ mission, at the low solar phase angle. The polarimetric observations are conducted from 2021 October to 2022 January. In particular, Phaethon was observed at the smallest phase angle ever observed (down to 8.8 deg) by WFGS2 on the Nayuta telescope. As a result, we found that the target's polarimetric properties are consistent with anhydrous chondrites.
「NIR Polarimetry of Large Asteroids」Yoonsoo P. Bach(Seoul National University)
We have conducted NIR polarimetry of asteroids (1) Ceres and (4) Vesta. We will report the current results and the scientific implications. In addition, we report the status of the development of NHAO NIC polarimetry reduction pipeline.
「ロケット実験CIBER-2の上空での感度較正を目的とする星の絶対フラックス測定」松浦周二(関西学院大学)
ロケット実験CIBER-2は宇宙赤外線背景放射の絶対輝度とゆらぎの測定により銀河の個別観測では捉えきれない宇宙初期を含む隠れた星形成史をあきらかにしようとするものである。この実験では観測装置の感度較正が重要であることから、今回は上空で観測された星の絶対フラックスをなゆた望遠鏡で観測しCIBER-2の感度較正を行おうとするものである。
「低質量星及びコンパクト天体を伴星に持つOB型星の連星探査」森谷友由希(国立天文台)
太陽質量以下の低質量星やコンパクト天体を持つOB型星は種族III恒星の超新星爆発の影響や重力波候補天体として重要な系である。前者の場合、近傍の大質量星と小質量星の連星の存在は超新星爆発が小質量星に与えうる影響を調べる手がかりとなる。また後者の場合は連星の進化の解明への手がかりとなる。 我々はこのようなOB型星連星を視線速度変化をモニターすることで探査してきており、これまでに数天体周期変化を示す系が見つかった。講演では観測の進捗を報告する。
「狭帯域測光探査で発見された金属欠乏星候補の分光追観測」岡田 寛子(甲南大学)
金属欠乏星は宇宙初期に誕生した太陽と比べ金属の含有量が少ない天体である。恒星の化学組成には形成当時の宇宙の化学情報が記録されているため、金属欠乏星の化学組成を調べることは宇宙初期の化学進化を理解する上で重要である。しかし従来の探査で発見された金属欠乏星は暗く、多数の元素を高い精度で測定することは困難であった。本研究では、木曽シュミット望遠鏡の広視野CMOSカメラ(Tomo-e Gozen)に星の金属量に感度のある狭帯域フィルタを搭載した、明るい金属欠乏星の探査観測を行っている。Tomo-e Gozenの試験観測で発見された金属欠乏星候補について、なゆた望遠鏡/可視光中低分散分光器(MALLS)を用いて分光追観測を行った。本講演では、これまでの試験観測および追観測の結果を報告し、今後の展望を述べる。
「なゆた望遠鏡NICによる遠方クェーサーの変光調査」関根 章太(早稲田大学)
本研究では、なゆた望遠鏡NICを用いて活動銀河核の一種であるクェーサーを観測した。低赤方偏移のクェーサーは一般に変光することが知られている。宇宙再電離期のような高赤方偏移でも、同様に変光しているかどうか調査するため、J,H,Ksの3バンド同時撮像を行なった。数ヶ月〜4年に渡る観測結果を報告する。また、過去の文献値があるものは、その値との比較も行なった。さらに、誤差を改善するため、ディザリング点数や撮像枚数の変更を行い、その影響についても議論した。その結果についても報告する。
「可視光分光装置MALLSを用いた恒星の化学組成調査」古塚来未(兵庫県立大学)
宇宙の金属量は時間とともに増加してきたと考えられ、恒星大気にはその恒星が生まれた時の宇宙の化学組成が保持される。そのため、様々な金属量の恒星で元素組成を調べれば、元素組成が時間とともにどのように変化してきたかを知ることができる。本研究では、なゆた望遠鏡に搭載された可視光分光装置MALLSのエシェルモード (波長分解能 ≃35000, 波長域4960 ~ 6800 Å) を用いて恒星の化学組成を調査した。本発表では、その結果を報告する。
「周期的な強度変動を示す6.7 GHzメタノールメーザーの近赤外線モニター観測」岩田悠平(国立天文台)
茨城大学では、32-m電波望遠鏡を用いて6.7 GHzメタノールメーザーのモニター観測を行っている。我々は、観測中のメタノールメーザー源450天体のうち、その強度が周期的に変動し、かつ2MASS点源カタログに対応天体候補がある19天体について、なゆた望遠鏡/NICを用いた近赤外線モニター観測を2021年10月より継続観測枠で開始した。これまでに12天体の検出に成功しており、そのうち2天体については測光を行い光度曲線を作成する予定である。本発表では、観測の概要、現在の状況、また課題について紹介する。
「太陽系外惑星TrES-1bの多波長トランジット観測」植野雅々(兵庫県立大学)
1995年にMayorとQuelozが51Pegの周りを周回する惑星51Peg bの発見して以来、様々な方法で系外惑星の研究が続けられており、現在5000個以上の系外惑星が発見されている。惑星を検出する方法の一つにトランジット法がある。系外惑星が大気を持っている場合、トランジット中に主星の光の一部が惑星の上層大気を通過し、原子・分子によって吸収されることがあり、波長によってわずかにトランジットの深さが異なる。 本研究では、なゆた望遠鏡に搭載された近赤外撮像装置NICを用いて太陽系外惑星TrES-1bのトランジットを観測した。取得した画像は画像処理ソフトIRAFで処理・解析を行い、EXOFASTを用いて光度曲線を求めた。本発表では、観測されたトランジットの深さから求められた波長ごとの主星と惑星の半径比から、惑星の大気について議論する。
「孤立楕円銀河NGC4636の偏光観測」戸塚都(兵庫県立大学)
おとめ座銀河団から離れた場所に孤立して存在するNGC4636について、WFGS2で偏光観測を行ったところVバンドでの偏光が確認された。楕円銀河における可視光偏光の検出について考察する。
「SMOKA の現状と今後の計画」小野里宏樹(国立天文台)
SMOKA は日本の光赤外望遠鏡の天文観測データのアーカイブシステムであり、国立天文台天文データセンターにより開発・運用されている。SMOKA は天文学の研究や教育の目的であれば誰でも利用し、観測データを取得することが可能である。なゆた望遠鏡の観測装置では 2019年 12月から NIC の生データが公開され、2020年 10月からは一次処理済みのデータも公開されている。本公演では SMOKA の現状と今後の計画について紹介する。
「ぐんま天文台150cm望遠鏡 2022年の現状」橋本 修(ぐんま天文台)
ぐんま天文台の150cm望遠鏡の現時点での状況と問題点、今後の展望について報告する。老朽化が進んではいるものの、最低限の機能は維持されている。観測装置の老朽化も目立つが、外部から持ち込まれた新装置の導入や、より大型の望遠鏡への移設などの新たな発展を図っている。
「中央大学天文台CHAOでの可視光測光・分光望遠鏡PHASTの構築」根本 登(中央大学)
恒星で生じるフレアでは最大規模の太陽フレアと比べて放射エネルギーが10万倍から1000万倍もの巨大なフレアが検出されている。これらではフレアループが星半径の数倍にも及ぶと考えられている。中央大学ではそれらがどの様な構造で如何に起こるかについて研究している。そのために中央大学天文台 CHAO(CHuo-university Astronomical Observatry)に2021年新たに可視光測光・分光望遠鏡 PHAST(PHotometric And Spctroscopic Telescope)を設置した。全天X線監視装置 MAXIの恒星フレア検知から2分以内に全自動で追観測するシステムとした。市販のドームと口径 40 cm、焦点距離3250 mm の望遠鏡、駆動速度が 20 deg / s である経緯台を用いて、波長分解能 R = 19000の高分散分光観測と測光観測を同時に行える構成とした。将来的にはCHAO内の可視光測光望遠鏡CAT、可視光分光望遠鏡SCATをトリガーとして追加することも考えている。
「法政大学二連望遠鏡HOTATEと星野村空き家天文台計画」田中幹人(法政大学)
本講演では、法政大学二連望遠鏡HOTATE(口径30cm+口径13cm)と、福岡県八女市星野村で活動中の空き家天文台計画などについてご紹介します。
参考:2021年度
参考:2020年度
2022.07.20