2023年度なゆたユーザーズミーティング(9月14日開催)
9月14日に開催予定(zoomを用いたオンライン形式)の兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 天文科学センター(西はりま天文台)が運用する 2mなゆた望遠鏡のユーザーズミーティングのご案内です。
本ミーティングでは、なゆた望遠鏡の運用報告や科学的成果の発表と共に、ユーザーの皆様からのご意見などをお待ちしております。なゆた望遠鏡で観測された方の積極的な発表をお願いします。また、将来、なゆた望遠鏡を使って観測を行いたいと考えておられる大学院生や研究者の方々、望遠鏡の運用や活用に興味のある方など多くの方の参加をお待ちしております。口頭発表と「ポスター+ショートトーク」の2形式で開催する予定です。
なお、直前の9/12-13にはせいめいUMも開催されます。国内の共同利用望遠鏡について考え、意見交換をする良い機会ですので、興味をお持ちの方は是非そちらにもご参加ください。
- なゆた望遠鏡ユーザーズミーティングに参加される方は、以下のWeb申し込みフォームに必要事項をご記入の上、提出してください。
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参加申し込みフォーム
(締め切り 講演:8月27日、参加のみ:9月12日)
開催日時:9月14日午後(オンライン開催) - なゆた望遠鏡運用報告(13:30-14:00)
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座長:高山
- 「西はりま天文台の活動報告」伊藤洋一(兵庫県立大学)
- 「なゆた望遠鏡の状況と運用報告」戸塚都(兵庫県立大学)
- 「搭載装置の現状」本田敏志(兵庫県立大学)
- 科学成果など(14:00-16:25)
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座長:利川
- 「近傍セイファート銀河 NGC 4151 の最高エネルギー分解能X線観測との同時赤外線モニター観測」峰崎岳夫(東京大学)
- 「可視光・近赤外線トランジット観測による太陽系外惑星の天気の研究」平野 佑弥(兵庫県立大学)
- 「Near Infrared Polarimetry of the Dawn Mission Targets Hints the Existence of Fine Particles」Yoonsoo P. Bach(Seoul National University/KASI)
- 「なゆた望遠鏡MALLSを用いた大質量星の視線速度変動モニタリング」須田拓馬(東京工科大学)
- 「なゆた望遠鏡MALLSによるBe星の伴星の近星点通過前後における中分散分光観測」石田光宏(横浜市立戸塚高等学校)
- 「不活性コンパクト連星のフォローアップ分光観測」谷川衝(東京大学)
- 「前主系列星の彩層活動と黒点・フレアによる光度変動の調査」山下 真依(兵庫県立大学)
- 「矮新星におけるアウトバースト頻度の長期的変化」大島誠人(兵庫県立大学)
- 「プレアデス星団に属する恒星の中性子捕獲過程元素の存在度」杉村風曉(兵庫県立大学)
休憩(15:15-15:30)
座長:川端
- 装置開発、他(16:25-17:40)
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座長:斎藤
- 「岡山理科大学熱赤外カメラ ONIcam」本田充彦(岡山理科大学)
- 「精密偏光観測装置POPOの開発状況」高橋 隼(兵庫県立大学)
- 「ぐんま天文台150cm望遠鏡とMuSaSHI」大朝由美子(埼玉大学)
- 「SMOKAの現状と今後の計画」内山久和(国立天文台)
- 「横浜市立戸塚高等学校天文台の活動報告」石田光宏(横浜市立戸塚高等学校)
zoom会議室の URL は参加・発表申込者にお伝えいたしました。
申し込んだにもかかわらず連絡が届いていない方はお知らせください。
プログラム
アブストラクト
「 なゆた望遠鏡の運用」伊藤洋一(兵庫県立大学)
西はりま天文台のこの一年間の活動について報告する。
「なゆた望遠鏡の状況と運用報告」戸塚都(兵庫県立大学)
この1年間のなゆた望遠鏡の設備状況や運用状況について
「搭載装置の現状」本田敏志(兵庫県立大学)
各装置について現状を報告する。
「近傍セイファート銀河 NGC 4151 の最高エネルギー分解能X線観測との同時赤外線モニター観測」峰崎岳夫(東京大学)
活動銀河核に観測される中性鉄蛍光輝線の放射領域と物質分布を解明すべく、XRISM 衛星性能実証フェーズに予定される近傍活動銀河核 NGC 4151 の複数エポックでの最高エネルギー分解能X線観測と同時に、なゆた望遠鏡による赤外線同時モニター観測を提案している。本講演ではその目的と現在までの準備状況について報告したい。
「可視光・近赤外線トランジット観測による太陽系外惑星の天気の研究」平野 佑弥(兵庫県立大学)
トランジット法とは、惑星が恒星の前を通過する際のわずかな減光を捉え、太陽系外惑星を発見する手法である。本研究ではなゆた望遠鏡と60 cm望遠鏡を運用し、可視光領域と近赤外領域を同時に観測することで、太陽系外惑星Qatar1-bの半径の変動を観測し惑星の天気について考察する。
「Near Infrared Polarimetry of the Dawn Mission Targets Hints the Existence of Fine Particles」Yoonsoo P. Bach(Seoul National University)
Polarized light from surface scattering on airless bodies is recognized for its capacity to contain critical information, including albedo, surface grain size, composition, and taxonomic types. So far, previous polarimetric studies on airless bodies have concentrated on optical wavelengths (λ ~ 0.5 µm), and we expand this exploration into the near-infrared (NIR) range. Our primary objective is to ascertain whether the polarization degree is dependent on the size parameter of the particles (X ∝ D/λ for particle size D). We investigated the Dawn mission targets, (1) Ceres and (4) Vesta, chosen for their brightness and extensive scrutiny by the Dawn mission, coupled with the probability of harboring diminutive grains (D ≲ 10 µm) on their surfaces. Leveraging the Nishiharima Infrared Camera (NIC) at the Nishi-Harima Astronomical Observatory (NHAO), we successfully obtained their polarimetric information in J-, H-, and Ks-bands. Our analysis conclusively verifies a notable alteration in Vesta's polarization degree, specificially within the Ks-band (λ = 2.15 µm). This aligns seamlessly with anticipated results from experiments, if the surface is primarily dominated by D = 10–20 µm particles. Consequently, we construe this alteration as observational substantiation of the existence of D = 10–20 µm particles on Vesta's surface. In contrast, Ceres displays no discernible shift in its polarization state from optical to NIR, and we interpret it as the prevalence of particles (or filament structures) of D ≪ 1 µm. We emphasize that no other polarimetric analysis of airless bodies at λ > 2 µm has been reported as of August 2023. Furthermore, it is the first attempt to successfully quantify particle sizes on airless bodies through multi-wavelength polarimetry.
「なゆた望遠鏡MALLSを用いた大質量星の視線速度変動モニタリング」須田拓馬(東京工科大学)
連星系は恒星同士の相互作用を通じた特異な恒星の起源となりうる重要な天体である。我々は連星間距離の小さい大質量星連星系に着目し、超新星イジェクタが伴星に衝突するような連星あるいは重力波起源天体となりうる連星が存在するか、観測的な検証を行ってきた。本講演では、本探査の理論的背景の概観とともに、なゆた望遠鏡MALLSによる観測成果について報告する。
「なゆた望遠鏡MALLSによるBe星の伴星の近星点通過前後における中分散分光観測」石田光宏(横浜市立戸塚高等学校)
Be星(γCas 型変光星) とは、光度階級が III-V の B 型星のうち、過去に一度でも水素の輝線がみられた天体である。赤道周りにガス円盤を作り、そこから輝線が出ると考えられているが、円盤への角運動量輸送機構等明らかになっていないことも多い。本研究では、Pollmann and Vollmann (2014)のようにBe星の伴星に着目し、なゆた望遠鏡に搭載されている可視光中低分散分光器(MALLS)を用い、伴星が近星点を通過する前後で分光観測を行った。その結果を報告する。
「不活性コンパクト連星のフォローアップ分光観測」谷川衝(東京大学)
これまでブラックホール・中性子星のようなコンパクト天体を含むコンパクト連星は主にX線連星やパルサーとして発見されてきた。位置天文衛星Gaiaが公開したデータベースGaia DR3は、X線を発さず、パルサーでもない、「不活性」なコンパクト連星の多数の候補を示している。我々はそれら候補の追観測をなゆた望遠鏡で行い、その存在を確定することを目指している。本講演ではその戦略などを示す。
「前主系列星の彩層活動と黒点・フレアによる光度変動の調査」山下 真依(兵庫県立大学)
前主系列星は自転が速く対流層が分厚いので, ダイナモ活動を起源とする強い磁場が形成されると考えられる. 本研究では太陽程度の質量を持つ前主系列星のTESSデータを解析し, 黒点占有率を求めた. その結果, 彩層輝線強度と光度変動の大きさは太陽, スーパーフレア星, 零歳主系列星, 前主系列星で一続きの正の相関を示すことが分かった. これは 太陽に類似した磁気活動のうち, 規模が大きいものが前主系列段階から続いていることを示唆する. 講演ではフレアによると考えられる突発的な増光や, 磁場強度との関連についても言及する.
「矮新星におけるアウトバースト頻度の長期的変化」大島誠人(兵庫県立大学)
矮新星におけるアウトバーストの頻度は、天体ごとに固有であると考えられているが長期的に安定しているかどうかについては特に注目されてこなかった。アウトバーストの頻度は伴星からの質量輸送率に強く依存していると考えられ、アウトバーストの頻度変化は質量輸送率が安定でない可能性を示唆する。当発表では、Z Cam型矮新星において長期的な光度変化とアウトバースト頻度を解析した結果、アウトバースト頻度が中長期的に変化することとそれがstandstillに関連する可能性について考察する。
「プレアデス星団に属する恒星の中性子捕獲過程元素の存在度」杉村風曉(兵庫県立大学)
鉄より原子番号の大きな元素は中性子捕獲過程によって生成される。この中性子捕獲過程はr過程とs過程に分類され、今までの研究でs過程元素は近年生まれた恒星ほど多く存在することが示唆された。一方で、若い恒星の集団である散開星団で5種類以上の中性子捕獲過程元素を調べた先行研究は数例しかない。そこで本研究ではKeck望遠鏡のエシェル分光器HIRESで撮られた可視光高分散分光スペクトルを用いて、プレアデス星団で7種類のs過程元素(Y, Zr, Ba, La, Ce, Pr, Nd)の存在度を調べた。本発表では、その結果を報告する。
「岡山理科大学熱赤外カメラ ONIcam」本田充彦(岡山理科大学)
岡山理科大学熱赤外カメラ ONIcam (Okayama Netsu-Infrared camera)は 1-28um に感度を持つ主に中間赤外線(L, N-band)観測を想定したカメラである。今年度から検討・開発をスタートさせており、将来的に西はりま望遠鏡にて観測をできればと考えている。構想や開発状況・予定について紹介する。
「精密偏光観測装置POPOの開発状況」高橋 隼(兵庫県立大学)
西はりま天文台では、精密偏光観測装置 POlarimeter for Precision Observations (POPO) を開発しています。その開発状況を報告します。
「ぐんま天文台150cm望遠鏡とMuSaSHI」大朝由美子(埼玉大学)
ぐんま天文台150㎝望遠鏡と、埼玉大学が150cm用に製作した三波長同時撮像装置MuSaSHIの現況について簡単に報告する。
「SMOKAの現状と今後の計画」内山久和(国立天文台)
本講演では、日本における光赤外望遠鏡の天文観測データのアーカイブシステムであるSMOKAの現状について報告する。具体的には、SMOKAの機能や利用状況に関する詳細な説明を行い、さらに今後のデータ公開に向けた展望や計画についても併せて報告する。
「横浜市立戸塚高等学校天文台の活動報告」石田光宏(横浜市立戸塚高等学校)
講演者が勤務する戸塚高校(神奈川県横浜市)には、1995年落成の天文台がある。中には35 cmニュートン式反射望遠鏡と12.7 cm、7.8cm屈折式望遠鏡、冷却CCDカメラや低分散分光器(R~600)があり、主に地学基礎の授業や研究観測、学校説明会や文化祭、地域向け観望会などに利用されている。活動状況や今後の運用方針について報告する。
過去の開催情報
2022年度
2021年度
2020年度
2023.09.26.