2024年度なゆたユーザーズミーティング(7月31日開催)
7月31日に開催予定(zoomを用いたオンライン形式)の兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 天文科学センター(西はりま天文台)が運用する 2mなゆた望遠鏡のユーザーズミーティングのご案内です。
本ミーティングでは、なゆた望遠鏡の運用報告や科学的成果の発表と共に、ユーザーの皆様からのご意見などをお待ちしております。なゆた望遠鏡で観測された方の積極的な発表をお願いします。また、将来、なゆた望遠鏡を使って観測を行いたいと考えておられる大学院生や研究者の方々、なゆたを使わなくても中小口径望遠鏡の運用や活用に興味のある方など多くの方の参加・発表をお待ちしております。口頭発表と「ポスター+ショートトーク」の2形式で開催する予定です。
- なゆた望遠鏡運用報告(13:25-14:20)
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座長:本田
- 「西はりま天文台の活動報告」伊藤洋一(兵庫県立大学)
- 「なゆた望遠鏡の観測自動化」高橋隼(兵庫県立大学)
- 「MALLS新CCDの現状報告」高山正輝(兵庫県立大学)
- 「精密偏光観測装置 POPO の開発」高橋隼(兵庫県立大学)
- 科学成果など1(14:35-15:15)
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座長:高橋
- 「不活性コンパクト連星の探査」谷川衝(福井県立大学)
- 「TESS測光サーベイを用いた恒星-コンパクト天体連星探査」白石祐太(東京大学)
- 「近傍セイファート銀河 NGC 4151 の XRISM 連携可視赤外線モニター観測」峰崎岳夫(東京大学)
- 「Quantitative Grain Size Estimationon Airless Bodies from the Negative Polarization Branch: The Case of Dawn Mission Targets, (4) Vesta and (1) Ceres using NHAO NIC」Yoonsoo P. Bach(KASI, Korea)
- Poster「Near-IR photometric monitoring of the quasi-periodic protostellar variable EC 53」相川祐理(東京大学)
休憩+Poster (15:15-15:30)
- 科学成果など2(15:30-16:40)
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座長:利川
- 「散開星団の中性子捕獲過程元素の組成」杉村風曉(兵庫県立大学)
- 「SMOKAの現状と今後の計画」小山 舜平(国立天文台)
- 「査読誌Stars and Galaxiesの紹介」高山正輝(兵庫県立大学)
- 議論(16:40-17:00)
Zoom会議室の URL は参加・発表申込者にお送りいたしました。
申し込んだにもかかわらず連絡が届いていない方はお知らせください。
プログラム(2024.07.31.)
※講演は質疑応答込みで15分以内(ポスターは5分)でお願いします。
アブストラクト
「 なゆた望遠鏡の運用」伊藤洋一(兵庫県立大学)
「なゆた望遠鏡の観測自動化」高橋隼(兵庫県立大学)
なゆた望遠鏡の観測を自動化するための開発を続けている。最近の進展を報告する。また、共同利用ユーザーへの自動観測システムの供用が部分的に始まったので、利用手順を説明する。
「MALLS新CCDの現状報告」高山正輝(兵庫県立大学)
今年7月よりMALLSのカメラを2K x 4Kの冷却CCDカメラへ更新し、現在運用中である。新たに補正レンズを製作し、従来のFLI社製カメラに対してロングスリットモードでおよそ2倍の波長範囲を一度に取得することが可能となった。一方読み出しノイズが時間変動する問題や、真空引きを継続しないとダークが高くなるといった、よくわからない問題がいくつか見つかっている。この新CCDカメラについて、問題の共有を兼ねて現状報告をする。
「精密偏光観測装置 POPO の開発」高橋隼(兵庫県立大学)
西はりま天文台では「高速位相変調」という技法を用いて精密に偏光を測定する装置 POlarimeter for Precision Observations (POPO) を開発している。その開発状況と今後の見通しを報告する。
「不活性コンパクト連星の探査」谷川衝(福井県立大学)
これまでブラックホール・中性子星のようなコンパクト天体を含むコンパクト 連星は主にX線連星やパルサーのような活動的な天体として発見されてきた。 しかし、X線や電波で明るくない「不活性」なコンパクト天体が、近年公開さ れたGaia DR3を基に、次々と発見されている。我々の研究グループもこれまで 確認されていない不活性なコンパクト連星を追跡中である。本講演ではその経 過について紹介する。
「TESS測光サーベイを用いた恒星-コンパクト天体連星探査」白石祐太(東京大学)
TESS衛星の光度曲線やGaia衛星の視線速度変動の情報をもとに、ブラックホールなどのコンパクト天体と恒星の連星の候補天体を選定し、MALLSで視線速度追観測を行った。本研究のターゲットは、周期1-10日の恒星-コンパクト天体連星系である。このような恒星-コンパクト天体連星系では、コンパクト天体の潮汐の効果などで恒星が軌道と同期した変光を示す。本研究ではTESS衛星の全天光度曲線サーベイの全10^7天体のデータを解析し、この変光を探索した。得られた候補天体に対し、MALLSで視線速度追観測を行った。1つの候補天体の軌道決定に成功し、他に2天体の視線速度変動を検出した。今後も同様の探索を継続し、ブラックホールなどコンパクト天体の典型的なサンプルを大量に発見し、その性質を明らかにすることを目指す。
「近傍セイファート銀河 NGC 4151 の XRISM 連携可視赤外線モニター観測」峰崎岳夫(東京大学)
活動銀河核の X 線スペクトルに観測される中性鉄蛍光輝線は、 活動銀河核内部の物質分布と構造の研究に極めて有用である。 我々は近傍活動銀河核 NGC 4151 について、XRISM 衛星による 2023年12月から2024年6月に計5回の観測と連携して、 なゆた望遠鏡を始めいくつかの地上光赤外線望遠鏡を用いて 可視分光・赤外線測光モニター観測を行ってきた。 本講演ではこれまでの進捗状況について報告する。
「Quantitative Grain Size Estimationon Airless Bodies from the Negative Polarization Branch: The Case of Dawn Mission Targets, (4) Vesta and (1) Ceres using NHAO NIC」Yoonsoo P. Bach(KASI, Korea)
Using NHAO NIC, we derived near-infrared polarimetric (NIRP) characteristics of (1) Ceres and (4) Vesta. This represents the first reported NIRP of a V-type asteroid and the second for airless small bodies. By comparing our observations with an extensive literature review (Bach et al. (2024) A&A, 684, 80), we conclude that Vesta is covered with 10-20 µm particles, consistent with previous studies (Bach et al. (2024) A&A, 684, 81). This study marks the first application of NIRP to estimate grain sizes on airless small bodies, establishing a novel and independent method that complements theoretical approaches such as thermal modeling.
「Near-IR photometric monitoring of the quasi-periodic protostellar variable EC 53」相川祐理(東京大学)
EC 53は準周期的な光度変動を示す低質量YSOである。光度変動に伴ってYSO周囲の円盤やエンベロープにおいて氷組成の変化や高温分子ガスの放射強度変化が期待される。我々はこの変化を捉えるためにEC 53の静穏期とアウトバースト期にJWSTで観測を行うことを提案し、観測時間を獲得した。EC 53の光度変動は準周期的なので、JWST観測を正確に光度曲線上に位置づけるために、近赤外輝度モニタリングが必要不可欠である。なゆた共同利用観測および共同研究観測の結果、JWSTでの実行された2回の観測が静穏期とアウトバースト期であることが確かめられた。
「散開星団の中性子捕獲過程元素の組成」杉村風曉(兵庫県立大学)
鉄より原子番号の大きな元素は中性子に捕獲過程によって生成される。中性子を捕獲する時間がβ崩壊より長いs過程は、漸近巨星分枝星(AGB星)で起きていることが分かっている。一方で、中性子を捕獲する時間がβ崩壊より短いr 過程は中性子星合体で起きると考えられている。また、数値シミュレーションではr過程元素の空間的な分布は不均一だと予測されている。そこで本研究では、Keck望遠鏡のエシェル分光器HIRESで撮られた可視光高分散スペクトルを用いて、プレアデス星団とヒアデス星団、プレセぺ星団に属するGK型主系列星(それぞれ16、12、10天体ずつ)で11種類の中性子捕獲過程元素(Y,Zr,Ba,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd)の存在度を調べた。本発表では、その結果を報告する。
「SMOKAの現状と今後の計画」小山 舜平(国立天文台)
SMOKAは、国立天文台天文データセンターによって開発・運用されている日本の光赤外望遠鏡の天文観測データアーカイブシステムである。天文学の研究や教育の目的であれば、誰でも利用することが可能である。本講演では、SMOKAの機能や利用状況と今後のデータ公開に向けた展望や計画について報告する。
「査読誌Stars and Galaxiesの紹介」高山正輝(兵庫県立大学)
Stars and Galaxiesは2018年より発行を開始した西はりま天文台の査読誌である。理論、観測、装置開発等の天文学研究のほか、科学教育、科学史など幅広い分野からの投稿を募集している。論文にはDOIが割り振られるほか、昨年分からはadsにも掲載される。これらを含めて現状の報告を行う。
過去の開催情報
2023年度
2022年度
2021年度
2020年度
last updated 2024.08.02.