31 151 33 34 兵庫県立大学 西はりま天文台 : 研究者向け
2015年(紀要 第3号)

論文リスト:


可視分光撮像装置LISS:西はりま天文台2.0-mなゆた望遠鏡への搭載と科学観測
 著者:小久保 充1、橋場 康人1、満田 和真1、酒向 重行1、諸隈 智貴1、土居 守1、Hanindyo Kuncarayakti2,3、森鼻 久美子4、伊藤 洋一4、新井 彰4
 所属:1) 東京大学大学院理学系研究科天文学教育研究センター   2) Millennium Institute of Astrophysics, Chile   3) Departamento de Astronom ́ıa, Universidad de Chile   4) 兵庫県立大学西はりま天文台   5) 京都産業大学神山天文台
 著者の電子メイルアドレス: mkokubo@ioa.s.u-tokyo.ac.jp
 Received: 2015 November 30

概要:我々は、ファブリ・ペロー撮像 (R∼200; 6000-900Å)、グリズム分光 (R∼100、400; 4000-10000 Å)、および広/狭帯域フィルター撮像の3つの観測モードを搭載した可視光分光撮像装置LISS (Line Imager and Slit Spectrograph) を開発してきた。2014年7月からは兵庫県立大学西はりま天文台なゆた望遠鏡にPI装置として搭載し、科学観測を行ってきた。本稿では、なゆた望遠鏡搭載時のLISSの性能について紹介するとともに、これまでに我々が行ってきたLISSを用いた科学観測について紹介する。

 Key words:galaxies: ISM — galaxies: individual: M82, NGC7714, NGC4395 — instrumen- tation: spectrographs — quasars: general — supernovae: individual: 2014ec, 2014ed, 2015E, 2015aa
 電子版を入手: PDF (8.4MB)


VTOSによるベテルギウスおよび近傍星のスペックル
 著者:三浦 則明1、八木 聖人1、桑村 進1、圓谷 文明2、坂元 誠3、馬場 直志4
 所属:1) 北見工業大学   2) 兵庫県立大学 西はりま天文台   3) 子ノ星教育社   4) 北海道大学工学研究院
 著者の電子メイルアドレス: miuranr@mail.kitami-it.ac.jp
 Received: 2015 November 30

概要: 我々は、2015年1月西はりま天文台の VTOS を用いてベテルギウスとその近傍星のスペックル観測を行った。データ解析は天体スペックル干渉法を用いて 行い、観測天体の空間周波数パワースペクトルを導出した。M型星とK型星のパワースペクトル分布には、B型星とは異なる共通の特徴が見られた。

 Key words:Speckle interferometory – Betelgeuse – spatial frequency power specterum
 電子版を入手: PDF (1.2MB)


小惑星 15552 Sandashounkan及び10399 Nishiharimaの自転周期
 著者:谷川 智康1
 所属:1) 兵庫県立三田祥雲館高校
 著者の電子メイルアドレス: tomoyasu_tanigawa@hyogo-c.ed.jp
 Received: 2015 November 30

概要: 西はりま天文台60 cm望遠鏡による測光観測で小惑星 15552 Sandashounkan 及び 10399 Nishiharimaの自転周期を決定した。15552 Sandashounkanは 2014年9月に、また 10399 Nishiharimaは2015年9月に観測を行った。自転周期の決定には西はりま天文台での観測画像に加え、インターネット望遠鏡 iTelescope.com による観測画像も使用した。何れの小惑星も自転周期は未知であった。私たちの観測結果は The Minor Planet Bulletinに報告した。 本研究は兵庫県立三田祥雲館高校天文部の活動として行われ、観測から英語による成果の発表を体験させる教育的意義もあった。

 Key words:asteroid – rotation period – photometry – light curve
 電子版を入手: PDF (1.2MB)


光度関数と後退速度から求めた銀河団Abell 2666までの距離
 著者:柴崎 遼1、中島 和弥1、原 正1
 所属:1) 埼玉県立豊岡高等学校
 著者の電子メイルアドレス: tdshara@kg8.so-net.ne.jp
 Received: 2015 November 30

概要: 我々は 2011年8月1日に、東京大学木曽観測所の105 cmシュミット望遠鏡に搭載された 2kCCD カメラで、銀河団 Abell 2666 の可視撮像観測を行った。また、201年7月28日と29日に、西はりま天文台2.0 mなゆた望遠鏡に同架されたMALLS 分光器を使いAbell 2666 のメンバー銀河 PGC 7260 を分光観測した。我々は Abell 2666の銀河光度関数をBバンドの撮像データを用いて作成し、この特徴的光度を持つ銀河の絶対等級や実サイズを天の川銀河と同じと仮定することで、距離を112 Mpc および 114 Mpcと推定した。さらに、MALLS 分光器での分光観測から得られた PGC 72600 の後退速度を用いて、ハッブルの法則から、距離を122 Mpcと測定した。なお、ハッブル定数は 67.15 km/s/Mpcとした。我々は距離についての結果を考察した。

 Key words:galaxies : luminosity function - galaxies : distances and redshifts - galaxies: clusters : individual (Abell 2666) - galaxies:individual : PGC72600
 電子版を入手: PDF (1.1MB)


ブライトリム分子雲に付随する前主系列星の探査
 著者:細谷 謙介1、 伊藤 洋一2
 所属:1) 兵庫県立大学物質理学研究科   2) 兵庫県立大学西はりま天文台
 著者の電子メイルアドレス: hosoya@nhao.jp
 Received: 2015 November 30

概要: 我々はブライトリム分子雲に付随する前主系列星の探査を行った。星間物質の密度が高い領域を分子雲という。分子雲と高温の星が隣接すると、その星からの紫外線放射により分子雲が圧縮され星形成が促される。このような分子雲をブライトリム分子雲 (BRC) という。リムは紫外線放射によって変形し、進化することも先行研究で知られている。分子雲の中で誕生する星は前主系列星といい、赤外波長域にエネルギーの超過がみられ、波長 656Åに強いHα輝線を示す。BRCの近赤外波長域の観測研究によって、BRC に付随した前主系列星が同定され、その進化段階が議論された。しかし、近赤外測光観測だけでは全ての進化段階の前主系列星を観測することかきず、統計的な議論に不足が生じる。そこで本研究では、先行研究にて観測した領域をHα輝線を含む波長域で分光観測した。その結果、前主系列星候補天体を64天体同定した。各領域での結果を比較すると、分子雲が進化するにつれHα輝線天体数が減少することが分かった。これは分子雲が進化する間にHα輝線天体も進化し、輝線を示さなくなったと考えられる。また、探査した領 域では高温の星からリムの方向にHα輝線天体、リム、近赤外測光観測で同定された星、と並ぶ。さらに、分子雲の進化が進むとHα輝線天体とリムとの距離は増加する傾向を示した。こうした空間分布の特徴は、BRCは隣接する高温の星に対して後退する方向に進化するという理論予測と矛盾しないと考えられる。

   電子版を入手: PDF (8.1MB)