2025年度なゆたユーザーズミーティング(7月9日開催)
7月9日に開催予定(zoomを用いたオンライン形式)の兵庫県立大学 自然・環境科学研究所 天文科学センター(西はりま天文台)が運用する 2mなゆた望遠鏡のユーザーズミーティングのご案内です。
本ミーティングでは、なゆた望遠鏡の運用報告や科学的成果の発表と共に、ユーザーの皆様からのご意見などをお待ちしております。なゆた望遠鏡で観測された方の積極的な発表をお願いします。また、将来、なゆた望遠鏡を使って観測を行いたいと考えておられる大学院生や研究者の方々、なゆたを使わなくても中小口径望遠鏡の運用や活用に興味のある方など多くの方の参加・発表をお待ちしております。
- なゆた望遠鏡ユーザーズミーティング(13:00-17:30)
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(13:00-14:15)
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「西はりま天文台の活動報告」
伊藤洋一(兵庫県立大学) -
「Multi-Wavelength Observations of Stellar Flares on Young Solar-Analog Star Using HST and Nayuta」
行方宏介(NASA/GSFC, 京都大学) -
「近傍セイファート銀河 NGC 4151 の多波長連携モニター観測」
峰崎岳夫(東京大学 ) -
「Optical and Near-infrared Contemporaneous Polarimetry of C/2023 A3 (Tsuchinshan-ATLAS)」
Bumhoo Lim (Seoul National University, Korea) -
「中長周期のコンパクト連星の探査」
谷川衝(福井県立大学)
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「大規模恒星サーベイ観測による短周期恒星-コンパクト天体連星探査となゆた望遠鏡」
白石祐太(東京大学) -
「高分散分光観測による恒星の化学組成調査」
古塚来未(兵庫県立大学 ) -
「分光観測による散開星団の属するポストTタウリ型星の探査
」
水本 拓走(兵庫県立大学理学研究科) -
「磁気活動性の高いK型星PW AndのHα線と近赤外CaⅡ三重輝線での分光観測」
永田晴飛(兵庫県立大) -
「NICによる測光カタログの自動生成」
斎藤 智樹(兵庫県立大学)
(14:30-15:45)
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「SMOKAの現状と今後の展望」
小山 舜平 (国立天文台) -
「天文学の灯を山陰に: 島根大学における観測的研究の展望について
」
山下 真依(島根大学) -
「なゆた望遠鏡を用いた観測実習体験」
高山颯太(埼玉大学 大学院) -
「精密偏光観測装置 POPO の性能評価」
高橋 隼(兵庫県立大学) -
「なゆた望遠鏡の運用状況」
戸塚 都 (兵庫県立大学)
(16:00-17:15)
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「西はりま天文台の活動報告」
- 議論(17:15-17:30)
開催日時:7月9日(オンライン開催)
Zoom会議室の URL は参加・発表申込者にお送りいたしました。
申し込んだにもかかわらず連絡が届いていない方はお知らせください。
プログラム(2024.07.09.)
※講演は質疑応答込みで15分以内でお願いします。
アブストラクト
「中長周期のコンパクト連星の探査」
谷川衝(福井県立大学)
これまでブラックホール、中性子星、白色矮星のようなコンパクト天体を含む コンパクト連星は、軌道周期10日以下という短周期のものが多く発見されてき た。しかし、2022年に公開されたGaia DR3を基に、軌道周期10日以上のコンパ クト連星が次々と発見されている。我々の研究グループもこれまで確認されて いない軌道周期100日以上という長周期のコンパクト連星を2つ発見した。ま た、軌道周期数10日程度の中周期のコンパクト連星も追跡中である。本講演で は、長周期のコンパクト連星の発見とその科学的意義、及び中周期のコンパク ト連星の観測の経過について紹介する。
「Multi-Wavelength Observations of Stellar Flares on Young Solar-Analog Star Using HST and Nayuta」
行方宏介(NASA/GSFC, 京都大学)
我々は、2024年3月29日から4月1日の4夜にわたり、HST、TESS、なゆた望遠鏡/MALLS、および日本・韓国の他地上望遠鏡を用いて、若い太陽型星EK Draの同時観測を実施した。その結果、恒星フレアに伴う質量噴出現象に伴う青方偏移を、遠紫外線とHα線の両波長でほぼ同時に検出することに成功した。多波長で質量噴出現象を検出したのは世界初の成果であり、これにより、質量噴出の多温度・多層構造を理解するための新たな手がかりが得られた。
「Optical and Near-infrared Contemporaneous Polarimetry of C/2023 A3 (Tsuchinshan-ATLAS)」
Bumhoo Lim (イム ボムフ) (Seoul National University, Korea )
We conducted contemporaneous optical and near-infrared polarimetric observations of C/2023 A3 (Tsuchinshan-ATLAS) from 2024 October 16 to December 17, covering a wide range of phase angles (20°–123°) and wavelengths (0.5–2.3 μm). We paid special attention to gas contamination in the dust polarization using these data. As a result, we find the maximum polarization degree P_max = 31.21% ± 0.05%, 33.52% ± 0.06%, 35.12% ± 0.01%, 37.57% ± 0.01%, and 35.35% ± 0.01% in the Rc, Ic, J, H, and Ks bands, respectively. Although dust polarization shows a red slope at shorter wavelengths and can peak around 1.6 μm, the phase angle at which maximum polarization occurs exhibits less dependence on wavelength ( –95°). Although only a few historically bright comets, such as West, Halley, and Hale–Bopp, have undergone such extensive dust-polarization observations, our measurements are generally consistent with those of two comets that possibly originated from the Oort Cloud (West and Halley). From these results, we conjecture that the optical properties and growth processes of dust in the presolar nebula, which formed these cometary nuclei, were likely uniform.
「西はりま天文台の活動報告」
伊藤洋一 (兵庫県立大学)
西はりま天文台の体制や共同利用観測の実施状況、「なゆた望遠鏡」の運用状況などについて報告します。
「なゆた望遠鏡を用いた観測実習体験 」
高山颯太(埼玉大学)
「なゆた望遠鏡を用いた天体観測実習」と「OISTER短期滞在実習」に参加させていただいた。 天体観測実習は一日目に、天文学に関する基礎、系外惑星、小惑星について講義していただき、夜は班に別れてトランジットと小惑星の観測を行った。天気が悪く、十分な観測データが得られなかったため、二日目以降はなゆた望遠鏡で過去に観測されたデータを用いて、トランジットの解析を行い、班ごとに発表した。三日間を通して、観測、解析、発表という一連の研究のプロセスを体感するとともに、観望会などを通して、天文学に触れながら様々な人と交流ができた実習であった。 OISTER短期滞在実習は「前主系列星候補天体の可視分光観測」というテーマで実施させていただいた。本実習では観測の事前準備から成果発表まで行わせていただいた。事前準備では、本テーマに必要なデータを得るために、どのような観測が必要なのかを考えながら計画を立案した。初日の夜に計画を元に観測を行い、ロングスリット可視分光観測の手法を学んだ。その後、観測したデータを解析し、成果発表をさせていただいた。本実習を通して可視分光観測や解析の技術を習得するとともに、自身の研究の理解も深まった。また、本実習の経験を踏まえ、共同利用観測に応募し、採択していただいたため、9月に観測をさせていただく予定である。
「SMOKAの現状と今後の展望」
小山 舜平 (国立天文台)
SMOKAは、国立天文台天文データセンターによって開発・運用されている日本の光赤外望遠鏡の天文観測データアーカイブシステムである。天文学の研究や教育の目的であれば、誰でも利用することが可能である。本講演では、SMOKAの機能や利用状況と今後のデータ公開に向けた展望や計画について報告する。
「天文学の灯を山陰に: 島根大学における観測的研究の展望について 」
山下 真依(島根大学)
島根大学松江キャンパスには、1939年に五藤光学研究所によって製作された15 cm屈折望遠鏡がある。2025年6月に数人で動作確認を行ったが、重錘式赤道儀のおもりが落下していることが判明した。直径4 mのドームは約10年前に改修されており、現在も問題なく動作している。本発表では、望遠鏡の動作確認の内容と課題について紹介し、今後の展望について述べる。
「精密偏光観測装置 POPO の性能評価」
高橋 隼(兵庫県立大学)
西はりま天文台では高速変調型の偏光観測装置 POlarimeter for Precision Observations (POPO) を開発した。明るい点光源に対する性能評価を行ったので、その結果を報告する。
「大規模恒星サーベイ観測による短周期恒星-コンパクト天体連星探査となゆた望遠鏡 」
白石 祐太(東京大学 )
質量相互作用をしていない周期数日以下の恒星-コンパクト天体連星は、Ia型超新星や重力波源などの前駆天体として重要であるものの、X線で暗いためこれまで発見されてこなかった。我々はTESSやGaiaの大規模恒星サーベイ観測のデータからこの周期数日以下の恒星-コンパクト天体連星を探査し、なゆた望遠鏡・せいめい望遠鏡で視線速度追観測を行っている。これまでの観測で周期1-3日のG型主系列-白色矮星(1Msun)連星を2つ同定し、他にも複数の有力な候補天体を発見している。本講演ではその経過を報告する。 また、2026年以降にはGaia DR4の公開が予定されている。短周期恒星-コンパクト天体連星探査の観点から、Gaia DR4に向けてなゆた望遠鏡に期待することについて簡単に議論する。
「なゆた望遠鏡の運用状況」
戸塚 都(兵庫県立大学)
2024年度、なゆた望遠鏡は雷の影響で被害を受けたが、三菱による迅速な対応により短期間で復旧した。本報告では、復旧後を含む現在の運用状況を紹介し、併せて望遠鏡に搭載されている検出器の現状についても簡単に述べる。
「高分散分光観測による恒星の化学組成調査」
古塚来未(兵庫県立大学)
恒星はその大気に生まれたときの宇宙の化学組成を保持する。宇宙の中で鉄などの元素は時間とともに増えてきたと考えられ、様々な金属量の恒星で化学組成を観測することで、元素の起源や銀河の化学進化について議論できる。本研究では、なゆた望遠鏡MALLSなどを用いた高分散分光観測により、トリウムなどの重元素の組成を見積もった。講演ではその起源について議論する。
「分光観測による散開星団の属するポストTタウリ型星の探査 」
水本 拓走(兵庫県立大学理学研究科)
太陽型星は、原始星、古典的Tタウリ星、弱輝線Tタウリ型星、ポストTタウリ星を経て、主系列星へと進化する。各段階の天体数は年齢スケールに比例すると考えられるが、ポストTタウリ型星は若い星に典型的な特徴が薄いため、実際の発見数が少ない。本研究では、Itoh (2024)により若い星団のメンバー候補として挙げられた天体について、分光データを取得した。リチウムの吸収線およびHα線の性質をもとに解析を進め、ポストTタウリ型星の同定を目指す。
「近傍セイファート銀河 NGC 4151 の多波長連携モニター観測 」
峰崎岳夫(東京大学)
我々は XRISM 衛星の観測と連携し、2023-2024 年にかけて近傍セイファート銀河 NGC 4151 の可視分光・赤外線測光モニター観測を実施してきた。2024年末からは 別の多波長モニター観測キャンペーンに参加し現在まで赤外線モニター観測を 継続してきた。本講演ではこれまでの研究成果と進捗状況について報告する。
「NICによる測光カタログの自動生成」
斎藤 智樹(兵庫県立大学)
NICパイプラインによる自動測光およびカタログ化について報告する。現状のパイプラインで一次処理・アストロメトリーまでを自動で行っており、そのデータから天体検出、測光、ノイズの測定を行い、クイックルック的なカタログを出力する仕組みを開発した。現状を報告し、ユーザーからの意見を募集したい。
「磁気活動性の高いK型星PW AndのHα線と近赤外CaⅡ三重輝線での分光観測」
永田晴飛(兵庫県立大学)
本研究では、西はりま天文台の2mなゆた望遠鏡と分光器MALLSを用いて、高い活動性を示すK型星PW Andに対して、Hα線および近赤外CaII三重輝線(CaII IRT)を含む波長域で分光観測を行い、それぞれの輝線と活動性の関係を調査した。
過去の開催情報
2024年度
2023年度
2022年度
2021年度
2020年度
last updated 2025.07.23.