MARS APPROACH
2016年5月31日 火星中接近
− NISHI HARIMA ASTRONOMICAL OBSERVATORY −
2016年5月31日 火星中接近
5月31日、地球と火星が最接近しました。兵庫県立大学西はりま天文台では、なゆた望遠鏡を用いて火星の撮影を行い、
21:20ころ以下の画像を取得しました。
6月は、火星は地球から離れてしまいますが、火星観望の好機です。夜の早いうちに空高い位置まで昇ってきます。
明るさも6月末でも-1.4等級と、1等星の中で一番明るいシリウスと同じくらいの明るさです。
21時20分頃、なゆた望遠鏡で撮影した火星です。
三角形ような黒い模様は、大シルチスと呼ばれる地形です。
今、火星はだんだん明るくなっています。火星の等級(明るさ)は、今年1月で1等台でしたが、3月には0等台、4月には−1等台、5月には
−2等になります。
火星は、1月から5月にかけて、約15倍も明るくなります。では、なぜ明るくなるのでしょうか?
答えは「火星と地球が近づくから」です。地球と他の惑星が接近することを会合と言います。
会合は一定の周期で起きます。地球と火星の接近は約780日、およそ2年2ヶ月ごとに起きます。
2016年は、5月31日に火星は地球と最接近するので、5月いっぱいまで火星は明るくなり続けます。
下の図は、2014年から2027年までの地球と火星の最接近をまとめたものになります。
地球と火星の最接近(国立天文台 天文情報センターより引用)
今年5月31日に地球と火星は最接近します。
地球と火星の最接近では、いつも地球と火星の距離が同じになることはありません。この原因は、地球の公転軌道と比べて、火星の公転軌道が
楕円に近いからです。
また接近を繰り返す周期も、ぴったり2年ではなく2年2ヶ月なので、この「2ヶ月」だけ地球と火星が最接近となる位置はずれることになり、毎回
距離も変わることになります。
2016年の最接近は、地球と火星の距離が約7500万kmとなる「中接近」です。最も地球と火星が接近する大接近は、次回2018年7月末になります。
5月31日を過ぎると、地球と火星の距離はだんだん遠くなります。しかしながら、6月末の火星はまだ-1.4等級とシリウス並みに明るいです。
接近が終わった後もまだまだ火星から目が離せません。
5月31日と6月5日の火星の出と入り、南中時刻は次の通りです(西はりま天文台での時刻)。
出の時刻 | 南中時刻 | 入りの時刻 | |
5月31日 | 18:10 | 23:8 | 4:12 |
6月5日 | 17:43 | 22:42 | 3:46 |
火星と地球が接近するとき、火星の見かけの大きさは大きくなります。
火星の見かけの直径は、2016年1月で約6秒角、3月で約11秒角、4月で約15秒角、5月の最接近のときで約18秒角と大きくなります。
面積で比べると、1月より5月末の火星は約9倍も大きく見えることになります。
5月の接近時、公開天文台にある大きめの天体望遠鏡で火星を観察できれば、火星の表面の模様がなんとなく分かるくらいになります。
なゆた望遠鏡で撮影した火星
左から1月16日、3月26日、4月19日、5月12日、5月22日、そして5月31日の火星になります。
写真の大きさは統一しているので、火星が大きくなっている様子が分かります。
火星の見かけの大きさ
1月16日、3月26日、4月19日、5月22日の火星の大きさを比較した写真です。
5月22日の火星は、地球大気の状態も良好だったので、表面模様が見えています。
「海」は火星の地表面で暗い部分をさします。けっして、地球のような海があるわけではありません。