MARS CLOSEST APPROACH in 15 YEARS => InSight Landing on Mars
2018年7月31日 火星大接近 ⇒ 11月27日 NASA火星探査機インサイト着陸
− NISHI HARIMA ASTRONOMICAL OBSERVATORY −
2018年7月31日 火星大接近 ⇒ 11月27日 NASA火星探査機インサイト着陸
日本時間2018年11月27日5時ころ、NASAの火星探査機インサイトが火星に着陸しました。
その後、インサイトから初めての火星の写真が送られてきました(下の写真)。
写真にはたくさんの土埃がついていますが、これは着陸の際に逆噴射したジェットにより火星表面から巻き上げられた土埃が
カメラレンズに付着したことが原因です。
着陸に成功したことにより、これから2年にも及ぶインサイト・ミッションがスタートすることになります。
インサイトが送ってきた初めての火星画像©NASA/JPL-CalTech
2018年11月27日早朝(日本時間)、NASAの火星探査機インサイトが火星に着陸します。インサイトは、火星の内部構造を
調査することを目的とした探査機です。
インサイトのミッションが成功すると、我々は史上初めて地球以外の惑星の内部構造についての情報を得ることになります。
インサイトは2018年5月5日に打ち上げられました。これは、2018年7月31日の火星大接近と関わりがあります。
火星表面上のインサイト(想像図)©NASA/JPL-CalTech
2018年7月31日、火星が15年ぶりの大接近を果たしました。
兵庫県立大学西はりま天文台では、2018年1月より一定の間隔で火星を撮影してきました。
下の写真は時系列に火星の画像を並べたもので、大きさが変化する様子が分かります。
なゆた望遠鏡で撮影した火星
左から2018年1月16日、2月26日、3月12日、4月18日、5月27日、6月3日、7月11日、7月31日、8月22日、11月25日の火星になります。
画像の大きさは統一しているので、火星の大きさが変化する様子が分かります。
※すき間なく並べています。それぞれの画像はクリックすると拡大できます。
2018年1月の画像の火星は、地球大気でぼやけたため、実際の視直径よりも広がって見えています。
2018年7月31日に火星は15年ぶりの大接近を果たしました。
地球と火星の距離は、約2年2ヶ月おきに短くなります。このことを火星の接近と呼びます(しくみは、下の「7月31日の火星大接近に
ついての記事」をご覧ください)。
下の図にある地球と火星の距離が短い年に火星探査機を打ち上げることにより、火星到着までの日数と燃料を節約することができます。
現在、火星表面を走行しているローバー(探査車)のキュリオシティも、2012年3月の火星接近のタイミングで火星へ送りこまれています。
インサイトは、ローバーのように火星表面を走行して探査しません。着陸した地点にとどまり、火星の内部構造を探査します。
では内部構造はどのように調べるのでしょうか。
キーワードは地震です。地震は、不幸にも災害を引き起こすことがありますが、地震が起きた天体の内部構造の情報を教えてくれます。
下の図のように、地中奥深くにある地震の震源から同じ距離だけ離れた2つの場所に地震計を置きます。それぞれの地震計までに揺れ
(地震波)が到達する間の地中には固い部分がある場合と、柔らかい部分がある場合があると仮定します。すると、固い部分を通って
やってきた地震波の方が柔らかい部分を通ってきた地震波より早く地震計へ到着します。地震波のこの性質を利用することにより、
内部構造を推定することができます。
地震波の性質(東京大学地震研究所より引用)
☆印は震源を、▲は地表の地震計をそれぞれ表します。
その他にも、火星内部の熱(地球で言うと地熱にあたるもの)についてその熱量や熱源を調べる装置や、火星の自転軸のふらつきを
測定することで火星の核の大きさを調べる装置が搭載されています。
このようにインサイト・ミッションがもたらす火星の内部構造の詳細な情報は、火星のことをより深く理解するだけではなく、
太陽系の岩石惑星や太陽以外の恒星で発見された地球サイズの太陽系外惑星への理解に役立つと期待されています。
2018年11月25日に兵庫県立大学西はりま天文台のなゆた望遠鏡で撮影された火星です。
18時00分ころに撮影しました。明るさは、約-0.1等になります。
大接近から4ヶ月が経過し、だいぶ小さく見えるようになりました。しかしながら、まだうっすらと模様が見えます。
また、形が欠けていることが分かります。
7月31日、火星が15年ぶりに大接近しました。兵庫県立大学西はりま天文台では、なゆた望遠鏡を用いて火星の撮影を行い、
21:10ころ以下の画像を取得しました。
明るさは約-2.8等になります。
撮影時の火星の高度が19°くらいと低かったため、地球大気により少しかすんで見えますが、うっすらと地表の模様が見えます。
21時10分ころ、なゆた望遠鏡で撮影した火星です。
火星の上部が青く、下部がオレンジに見えるのは、地球の大気分散が原因です。
2018年7月31日の火星最接近時から8月上旬にかけて、なゆた望遠鏡の観望会の時間帯である19:30-21:00の間、
火星の高度は低いので、きれいに火星を見ることはできません。
なゆた望遠鏡できれいな火星を観察されたい方は、20:30までに火星の高度が20°以上となる2018年8月中旬以降に
お越しください。
なゆた望遠鏡で見た火星(動画)
2018年7月31日、地球と火星との距離が15年ぶりに大きく近づきます。このことを火星の大接近と呼びます。
火星は、2018年7月31日に向けて、夜空でだんだん明るくなっています。火星の等級(明るさ)は、2018年1月で
1等台でしたが、2月から3月にかけて0等台、4月中旬以降はマイナス等級になり、7月31日の最接近時には-2.8等まで
明るくなる予報です。この明るさは、同じ日の木星(明るさ-2.1等)より明るいです。
火星は2018年1月から7月にかけて、約40倍も明るくなります。これは火星と地球が近づくことで、「見かけで火星が
明るく見える」ようになるからです。
火星も含め、地球と他の惑星が接近することを会合と言います。会合は一定の周期で起きます。
地球と火星の接近(会合)は約780日、およそ2年2ヶ月ごとに起きます。
地球と火星の接近(国立天文台 天文情報センターより引用)
2018年7月31日に地球と火星は、5759万kmまで接近する大接近になります。
接近距離は毎回異なり、短い順に“大接近、中接近、小接近”に分かれています。
接近距離が変わるのは、火星の公転軌道が地球のものより歪んでいることと、会合周期が2年2ヶ月であることが原因です。
最接近時の距離が6000万kmより短くなる火星接近は、2035年9月11日まで起きません。
さて火星の接近は2年2ヶ月ごとに起きますが、今回は前回2003年から見て15年ぶりの大接近になります。これは、
地球と火星の最接近がいつも同じ距離にならないことを表します。この原因は、地球の公転軌道と比べて火星の
公転軌道がより楕円であることと、接近を繰り返す周期がぴったり2年ではなく2年2ヶ月であることです。
火星の公転軌道の方がより楕円なので、地球と火星の公転軌道のすき間は、所々で距離が異なります。加えて、
地球と火星が接近する公転軌道上の場所は、接近を繰り返すたびに「2ヶ月」分ずれることになります。
したがって、地球と火星の接近距離は毎回変わることになります。
2018年の最接近は地球と火星の距離が約5759万kmとなり、約6万年ぶりの大接近と騒がれた前回2003年の5576万kmに
匹敵する距離となります。
2018年7月31日を過ぎると、地球と火星の距離はだんだん長くなります。しかしながら、9月初旬でも火星はまだ-2等級の
明るさを保ちます。
今年の夏から秋にかけて、火星から目が離せません。
火星は、2018年5月には夜半以降に空へと昇ってきます。21時など夜の早い時間帯に観察できるのは、2018年7月以降になります。
観察方法は、何日かおきに目で見てみることをおススメします。特に、2018年5月から7月にかけてどんどん明るくなる様子を
観察できます。
観察する場所は、特別星空がきれいな場所である必要はありません。街中でも観察できます。
天体望遠鏡で観察する場合は、地球と火星が最も近づいている2018年7月31日の前後1ヶ月間がおすすめです。
ぜひ、天体望遠鏡で火星の表面を観察することにチャレンジしてみましょう。
天体望遠鏡をお持ちでなくても、近くの公開天文台で観察会が開催されている場合があります。ただし、観察会の開催時間に
よっては、火星がまだ昇ってきていない、
または高度が低いため、観望できない場合もあります。事前に確認の上、公開天文台へ足をお運びください。
出の時刻 | 南中時刻 | 入りの時刻 | |
6月30日 | 21:26 | 2:24 | 7:18 |
7月31日 | 19:11 | 23:53 | 4:42 |
8月31日 | 16:50 | 21:33 | 2:19 |
2018年7月31日21時の空(ステラリウムを用いて作成)
南東の空に火星、南に土星、南西に木星が輝きます。
3つの惑星の見える方角がほぼ同じとなるのは、2018年6月30日では23時、8月31日では19時になります。
火星と地球が接近するとき、火星の見かけの大きさは大きくなります。下の図を見てください。火星の見かけの直径(視直径)は、
2018年1月で約5秒角だったものが、6月までに3倍の約15秒角に、そして7月31日の最接近時には約5倍もの24.3秒角まで
大きくなります。
面積で比べると、2018年1月より7月末の火星は約25倍も大きく見えることになります。2018年7月から9月にかけての2ヶ月間は、
火星の視直径は20秒角より大きいので、この時期に公開天文台にある大きな天体望遠鏡で火星を観察できれば、火星の表面の
模様を観察できる場合があります。
2018年の火星接近にともなう地球までの距離と視直径の変化(国立天文台 天文情報センターより引用)
2018年7月31日に地球と火星は、5759万kmまで接近し、視直径は24.3秒角まで大きくなります。
最接近時の前後1ヶ月間は、視直径20秒角以上かつ明るさ-2等級台なので、絶好の観察時期となります。