Cassini The Garnd Finale
2017年9月15日 土星探査機カッシーニ グランドフィナーレ
− NISHI HARIMA ASTRONOMICAL OBSERVATORY −
2017年9月15日 土星探査機カッシーニ グランドフィナーレ
土星探査機カッシーニは、日本時間2017年9月15日19:30ころに土星の大気へ突入し、20:55ころ同探査機からの信号途絶が確認されました(※)。
信号の途絶は、カッシーニが土星上空で土星大気との摩擦熱で燃え尽きたことを意味します。ここに10年以上も土星を周回観測してきたカッシーニの全ミッションが完了しました。
これからは、カッシーニが届けてくれた膨大な観測データの解析作業が待っています。解析は地道に行うほかなく、すべての解析が終わるには途方もない時間がかかります。
しかしながら、現在そして未来の天文学者たちは、カッシーニのデータから土星の新たな真実を見つけ出すことでしょう。
(※)カッシーニは土星大気へ突入後、約1分で燃え尽きました。地球と土星との間を通信するのに片道83分くらいかかるため、突入時刻と信号途絶の確認時刻との間に時間差ができます。
カッシーニは、NASA(アメリカ航空宇宙局)が主体となって開発・打ち上げ・運用を行っている土星探査機です。1997年に打ち上げられてから、2004年に土星へ到達し、
以来10年以上にわたり土星を周回観測してきました。また、土星最大の衛星タイタンへ小型機ホイヘンスを投下するなど、野心的な試みを行いました。
カッシーニ&ホイヘンスとは
どちらも人物名です。カッシーニ(ジョヴァンニ・カッシーニ(1625‐1712))は、パリ天文台の初代台長になったフランスの天文学者で、
土星の輪が複数の輪でできていることを発見しました。この功績をたたえ、土星の輪に空いた大きなすき間が“カッシーニの空隙”と名づけられました。
ホイヘンス(クリスティアーン・ホイヘンス(1629‐1695))はオランダの天文学者で、土星の衛星タイタンの発見者としてその名が歴史に残っています。
土星探査機カッシーニのイメージ(©Flickr/Kevin Gill)
背景の星は、土星とその衛星タイタン。
なゆた望遠鏡で見た土星
土星の輪に空いた大きなすき間(黒いすじ)がカッシーニの空隙。
土星を周回観測
カッシーニ探査機は土星を周回しながら、土星表層や輪、衛星を観測しました。2台のカメラ(広角用と望遠用)を使い分けることで、それまで私たちが見たことがない
土星系の風景を地球に届けてくれました。この2台のカメラは、グランドフィナーレのその時まで、土星を見つめ続けています。
(写真左)土星の北極。土星も木星と同じガス惑星。表面にはしま模様が見える。土星の北極域の模様は六角形の形状をしている。これは土星大気の渦巻くジョット気流が作り出した。
(写真右)土星の輪のすき間。土星の輪は複数の輪の集合なので、輪と輪の間は隙間が空いている。このすき間ができる原因の一つに羊飼い衛星の存在が挙げられる。
この衛星が輪の中を通ることで、輪を作る小さな氷の粒がはじかれてすき間が空く。羊飼い衛星は、輪のすき間を通って土星を公転し輪の氷の粒をゆさぶるので、輪に波が立つ。
小型機ホイヘンスを衛星タイタンへ投下
土星最大の衛星タイタンには厚い大気が存在します。この大気は、主に窒素とメタンでできています。カッシーニ探査機は、小型機ホイヘンスをタイタンへと投下することに成功しました。
ホイヘンスはタイタンへ落下中に、タイタンの大気の成分を詳しく解析したり、上空からタイタンの表面の撮影に挑戦しました。その結果、タイタン表面には液体メタンの湖が存在する
ことをつきとめました。湖の存在から、タイタンではメタンの雲からメタンの雨が降り、湖を作り、その液体メタンが再び干上がってメタンの雲を作っていると考えられています。
これは、地球の水の循環と同様に、タイタンではメタンが循環していることを示唆します。
一方で、このメタンは循環しているのではなく、タイタン内部から湧き出てきたものが湖を作り、それが蒸発することでメタンの雲を作っているとの推測を支持する観測結果も報告されています。
ホイヘンスが撮影したタイタンの表層にあるメタンの湖
湖と考えられている箇所を青く疑似的に表示してある。
10年以上の長きにわたり土星を観測し続けてきたカッシーニ探査機ですが、とうとう探査を終了するときが来ました。NASAでは、カッシーニ探査機の最終ミッションを
“グランドフィナーレ”と銘打ち、土星本体と輪のすき間を通過するように土星を周回させるなど、これまでにない土星探査を実施します。そして2017年9月15日(世界時間)に
土星へと落とされる予定です。カッシーニ探査機は、土星大気との摩擦熱で燃え尽きることになります。これは、カッシーニ探査機に付着した地球の微生物が土星の衛星を
汚染しないようにするための措置です。
9月15日はぜひ、地球から遠く離れた土星の地で任務を全うする土星探査機カッシーニに思いをはせてください。
燃え尽きるカッシーニ探査機のイメージ
カッシーニが最後に見る光景は、これまでにない絶景となるでしょう。