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兵庫県立大学西はりま天文台

− NISHI HARIMA ASTRONOMICAL OBSERVATORY −

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2017.03.30
インクルーシブデザイン・ワークショップを開催しました

インクルーシブデザインとは、例えば障がいのある人など、特別なニーズを持つ
ユーザーがデザインの出発段階から参画することで、多様な人を対象に含み、
かつ魅力的なモノやサービスを生み出そうという考え方のことを指します(※)。

兵庫県立大学西はりま天文台では、実験的にインクルーシブデザインをしてみる
ワークショップを開催しました。目の見えない・見えにくい方2名、耳の聴こえない方
1名を含む合計16名の参加者に、西はりま天文台の新しいプログラム・展示・教材・
道具などを提案していただきました。

ワークショップは、2つのグループに分かれて行いました。各グループで、見えにくい方、
または聴こえない方に「リードユーザー」になっていただき、リードユーザーのニーズを
発見することから始めます。そのために、60cm望遠鏡での昼間の星の観望会と
なゆた望遠鏡の見学会を体験し、どんなことに困るかを調べました。リードユーザーが
困ったことを解決しつつ、他の人のためにもなるようなアイデアを議論して考えます。
アイデアが出たら、簡単な工作をしたりして、すぐにかたちにします。なゆた望遠鏡での
夜間観望会に臨み、仮のアイデアを試しました。翌日、半日かけてアイデアを練り直し、
考案したアイデアを最後に発表しました。

リードユーザー個人のニーズから出発したアイデアが、広範囲の人たちのためにもなる
アイデアに昇華していく過程は、例えばこんな感じです。リードユーザーのおひとりは、
望遠鏡の接眼レンズごしの観望では、明るい天体の存在がわかるかどうかという見え具合
だそうです。そこで、接眼レンズにスマートフォンをあてて撮影し、スマホ画面上で画像を
拡大したところ、格段に見やすくなりました。接眼レンズはひとりしか覗けませんが、スマホや
モニターに映せば複数の人が同時に見ることができます。「みんなで語り合える、鑑賞体験
を共有できる」、「天体の説明もしやすいし、わかりやすい」、「天体導入中の映像も生中継
したら、視野を星が流れていく様子が見えて楽しそう。また、夜空のなかで視点を移動して
いることがよく実感できるのでは?」… といった、普遍性のあるメリットがどんどん見えて
きました。こうして、「なゆたで『モニター』大作戦」というアイデアがまとまりました。

また、「望遠鏡で星を見る」という行為について重要な気づきがありました。議論の中で、
「望遠鏡」と「手探り」は似ているとの指摘がありました。望遠鏡は、大きな星空全体のごく
一部分のみを切り取ります。大きな物を手探りだけで把握するときもそうです。つまり、
両者とも得られるのは「部分」の情報であるという点で共通しているのです。この捉え方は、
観望会をする上で大きなヒントになりそうです。部分だけをバラバラに提示されたら、それらを
整理して理解するのは大変です。全体(星空全体、宇宙全体)との関係を提示した上で
部分(個別の天体)を見せること、あるいは部分同士の関連性を持たせることが、重要である
ように感じました。

ここでは紹介しきれませんが、たくさんのアイデアが提案されました。今度は、提案された
アイデアをもう少し本格的に試行してみる機会を設けようと考えています。
最後に、アイデアをまとめていただいた参加者の皆様に感謝申し上げます。

(※) 人によって若干定義は異なることもあります。インクルーシブデザインは「ともにつくる」という
プロセスを重視します。障がいのある人だけを対象とする特殊なものを作ることではありません。

このワークショップは、兵庫県立大学COC事業「ひょうご・地(知)の五国豊穣イニシアティブ」
および、科研費「インクルーシブ・ワークプレイス・デザインにおける行動観察の評価指標研究」
(代表者: 塩瀬隆之)の共催事業として開催しました。


図1 天文台プログラムを体験して、
困ったことを書き出した付箋。

図2 なゆた望遠鏡での観望会で、タブレットを使っての
鑑賞を試す。

図3 望遠鏡の中での光の経路の理解し
にくいという声を受けて、試作した模型。
光の経路をタコ糸で結び、目で見ても、
手で触りながら辿っても理解できるように
工夫。
 
図4 聴こえる聴こえないに関わらず、
観望会案内役が説明を始めたことに
気づかないことがあることから、案内役
が話し始めると薄灯りがつくシステムを
考案。手話のための灯りにもなる。
2017-03-30 13:09| Categories:ニュース

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